ID番号 | : | 00671 |
事件名 | : | 解雇無効確認等事件 |
いわゆる事件名 | : | 阪南港運事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | スト権確立の過程において組合の内部統制を乱したとして労組から除名され、ユニオンショップ協定に基づいて会社から解雇された労働者が、解雇の無効確認を求めた事例。(請求認容) |
参照法条 | : | 民法536条1項 労働基準法89条1項3号 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / ユニオンショップ協定による解雇と賃金請求権 解雇(民事) / ユニオンショップ協定と解雇 |
裁判年月日 | : | 1977年5月9日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和51年 (ワ) 427 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 時報879号140頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金―賃金請求権の発生―ユニオンショップ協定による解雇と賃金請求権〕 被告は、本件解雇は、もっぱら組合の除名処分を理由とし、ユニオン・ショップ協定に基づきその履行としてなされたものであるから、除名処分が無効となり、解雇も無効とされた場合には、原告の不就労につき、被告には何ら責任がなく、したがって民法五三六条一項により、原告らには、本件解雇の意思表示後の不就労期間中の賃金債権が発生していない旨主張するが、前記のとおり、ユニオン・ショップ協定に基づく解雇は、組合の除名処分が有効な場合に、使用者に解雇義務が発生しその履行としてなされるものであるから、たとえ、除名処分が組合の内部自治の問題であるにしても、使用者が、除名を理由に右協定による義務の履行として解雇する以上、使用者側としては、組合内部に深く立入って、除名事由の存否、処分手続の適正等につき厳密に調査、検討し、そのうえで解雇義務発生の有無を判断すべき義務はないにしても、少くとも、当該除名処分が、外観上、実体的、手続的に組合規定等所定の規定に基づいてなされたものであるか否かの調査、検討をしたうえで解雇義務の履行をなすべき義務があると解するのが相当である。これを本件についてみるに、前記のように組合のなした原告らの除名処分には、実体的、手続的に重大な瑕疵があって無効であるところ、右瑕疵は、被告会社において通常の注意をもって調査すれば容易に知り得たであろうことは推認に難くなく、この意味で、重大明白な瑕疵を知らないまま本件解雇の意思表示をなした被告会社には、過失により原告らの就労を拒否した責任があるといわざるを得ない。 〔解雇―ユニオンショップ協定と解雇〕 右のとおり、本件除名処分には、除名処分事由に該当する事実がないのに処分した違法があり、かつ、組合規約に定められた除名処分手続を履践しない違法があり、これらは、いずれも除名処分を無効ならしめる重大な瑕疵であるというべきである。 しかるところ、労働組合から除名された労働者に対しユニオン・ショップ協定に基づく労働組合に対する義務の履行として使用者が行う解雇は、ユニオン・ショップ協定によって使用者に解雇義務が発生している場合にかぎり、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当なものとして是認することができるものであり、右除名が無効な場合には、使用者に解雇義務が生じないから、かかる場合には客観的に合理的な理由を欠き社会的に相当なものとして是認することができず、他に解雇の合理性を裏づける特段の事由がないかぎり、解雇権の濫用として無効であるいうべきところ(最判昭和五〇年四月二五日民集二九巻四号四五六頁以下参照)、本件においては、右特段の事由は認められないから、原告らに対する本件解雇もまた無効といわざるをえない。 |