全 情 報

ID番号 00687
事件名 仮処分取消・異議申立事件
いわゆる事件名 東北電気製鉄事件
争点
事案概要  政党機関紙に会社批判の記事を掲載したことが、就業規則所定の解雇事由たる「事業経営上やむを得ない事由」には該当しないとして、会社のなした従業員としての地位の停止を認容した原決定を取消した事例。
参照法条 民法541条
労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 会社批判
裁判年月日 1950年5月24日
裁判所名 盛岡地
裁判形式 判決
事件番号 昭和24年 (モ) 86 
昭和25年 (モ) 14 
裁判結果
出典 労働民例集1巻3号462頁
審級関係
評釈論文
判決理由  而して成立に争ない乙第十六号証被申立人の就業規則第十五条第三号所定の被告の従業員の解雇事由たる「事業経営上已むを得ない事由」とは雇傭契約に期限の定ある場合なると否とに拘らず被申立人の事業運営上の事由であることを要し而も民法第五百三十六条又は五百四十三条に定むる労務者がその労務義務の履行不能を生ずる場合は之に含まれぬものと解すべく、即経済上の状勢又は事業上の失敗その他事業障害により事業経営困難となり事業を縮少又は従業員を整理せねばならぬ場合等、その事由の存するに拘らず雇傭契約を継続することが一般の見解上著しく不当又は不公平であると認められる事実を指し、その事由発生に付当事者に過失の存在を要せず、又過失存する場合に於ても債務不履行の存在を要せぬものと解せられる。然らば叙上各所為は右就業規則の定むる場合に該当しないことは明であると言わねばならぬ。尤も前示各種の貼紙は、当時和賀川工場には数度の不詳事があったので、証人A、Bの各証言により明なように、会社に対し工場の設備不完全に付警告し従業員の覚醒を促して会社に対する待遇改善要求の態度を強化する為になされたものであろうが、文言が矯激で公衆を刺激し徒に会社に対する反抗を激成し、労務者としての正当な言動と言うことが出来ぬ。雇傭関係に於ける労務者は労務提供の義務を信義誠実の原則に従って履行しなければならないから、申立人が右の様な所為を改めない場合、普通の債務不履行の場合に該当し、被申立人に於て民法五百四十一条の規定に従い雇傭契約を解除することは出来るけれ共右就業規則の規定により即時解除を為し得る事由には当らないと言わねばならぬ。