ID番号 | : | 00688 |
事件名 | : | 仮処分、取消・異議控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 東北電気製鉄事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 政党機関紙における記事の掲載が、就業規則上の「事業経営上やむを得ない事由」にあたるとした解雇につき、一応有効として、使用者による仮処分申請を認容した事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項3号 労働基準法3条 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 会社批判 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / 信条と均等待遇(レッドパージなど) |
裁判年月日 | : | 1950年12月27日 |
裁判所名 | : | 仙台高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和25年 (ネ) 115 |
裁判結果 | : | |
出典 | : | 労働民例集1巻6号1071頁/労経速報16号22頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則-均等待遇-信条と均等待遇(レッドパージなど)〕 成立に争いのない乙第一、二、三号証、前記各証人の証言及び控訴人主張のような当時の社会状勢(即ちいわゆる九月革命説の流布、松川事件、平事件、三鷹事件の発生、A会社その他に騒擾ストの頻発等……これらは公知のことである)と考え合せると、右B紙上の記事は、単に抽象的な政治的理念の表明たるに過ぎないものではなく、控訴会社和賀川工場の経営組織を変革して企業を労働者の共同管理にもつていこうとする具体的意図の表現たることが疏明し得られ、控訴会社がこれにつき異常な関心をもったことも無理からんところというべきである。控訴会社が被控訴人を解雇するに至つたのは控訴人主張の上記(三)の(イ)(ロ)(ハ)のような事実からして会社内部の秩序を維持し事業経営の安固を計るためやむを得ないところと認め、控訴会社和賀川工場就業規則第十五条第三号の「事業経営上止むを得ない事由あるとき」にあたるものとしたによるものであることは成立に争いない乙第十一号証第十六号証原審における控訴会社代表者C本人訊問の結果によつて疏明し得られる。要するに被控訴人の提出援用に係る全疏明資料によつても、いまだ被控訴人に対する解雇が、被控訴人の抱く政治的信条の如何を問題としたによるものであることを疏明するに足りないから、右解雇が労働基準法第三条に違反するものとする控訴人の主張は採用し得ない。 〔解雇-解雇事由-会社批判〕 次に控訴会社が被控訴人解雇の事由としてあげた前認定のような事実関係が、果して控訴会社和賀川工場就業規則、(乙第十六号証)第十五条に解雇し得る場合として掲げる第三号の「事業経営上已むを得ない事由あるとき」にあたるか、どうかの問題であるが、右条項は会社が一般経済事情又は事業上の失敗等のため事業を縮少し、従業員を整理するの已むなきに至った場合のようにその事由が労働者の帰責事由に関係なく専ら会社の事業運営上解雇が已むを得ないと認めうるときに限るものと解すべきではなく、本件について前に認定したような労働者の所為のために職場の規律が馳緩し、能率が低下し、事業の運営に不安、支障を来たすような虞があり、その為、解雇が已むを得ないものと認め得る場合の如きも右条項にあたるものと解するのが相当である。以上の次第であるから前記解雇は一応有効なりと認めるべきであり、従って、控訴会社が本件仮処分命令申請によって保全しようとする請求権については疎明ありといわねばならない。なお前に認定したような事実関係から見て本件仮処分を必要とする事情も一応肯き得ないことはないからして、本件仮処分命令申請はこれを認容し、さきに原審のした仮処分決定はこれを認可すべきである。 |