ID番号 | : | 00724 |
事件名 | : | 仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 全日本検数協会事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 上司に対する反抗的態度等のために約二ケ月にわたる就業禁止処分がなされ、その後勤務態度が改まらないとして解雇された原告が、就業禁止命令の効力停止を求め仮処分申請した事例。(申請一部認容) |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 民法1条3項 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の限界 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度 解雇(民事) / 解雇事由 / 第三者得意先からの苦情 |
裁判年月日 | : | 1965年10月18日 |
裁判所名 | : | 名古屋地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和40年 (ヨ) 525 |
裁判結果 | : | |
出典 | : | 労働民例集16巻5号731頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 小西国友・ジュリスト392号145頁 |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇―懲戒権の限界〕 本件就業禁止期間が昭和四〇年二月二五日から約二ケ月の長期にわたったこと、その間同年三月二五日の給料支払日において被申請人協会が申請人に対し金六、六〇〇円の減給をなし、又それ以降賃金を支払っていないことは当事者間に争はない。成立に争のない乙第一号証によれば、就業規則第五八条以下に懲戒処分に関する規定を置き、懲戒処分は懲戒委員会の議を経て行うこと、懲戒処分の一つに出勤停止処分がありそれは七日以内としていることが認められ右認定を覆すに足る証拠はない。右出勤停止に関する規定及び当事者間に争のない就業禁止に関する就業規則第二四条の規定を綜合すれば就業禁止は職場秩序維持のため一時的になされる処分と考えられる。従って本件の就業禁止は就業規則の規定を潜脱した実質的な懲戒処分と認められ、この点において本件就業禁止は違法である。被申請人は本件就業禁止が長期にわたったのは申請人が勤務態度を改めようとしなかったためである旨主張するが右主張は前記判断をくつがえしうるものではない。 〔解雇―解雇事由―勤務成績不良・勤務態度〕 被申請人は申請人が午後四時に退社する際には上司に挨拶して帰るよう指示されているにもかかわらずそれを実行しなかった旨主張する。しかし退社時に上司に挨拶することは一般社会における礼儀に関することであり業務に関することではない。従ってそれを指示命令することは業務上の指示命令とは認められず、元来使用者が従業員に指示命令し強制しうる事項ではない。従って退社の挨拶をしないことは解雇の理由となる事項ではない。 以上認定の事実によれば申請人は反抗的な態度や発言をなし、通常の状態において考えるならば不穏当ともいうべき発言をなしたことが認められる。しかしそれらの態度、発言は被申請人協会の違法なる就労禁止中のものであり、又それを原因とするものと認められる。従って申請人の前記態度、発言をもって、前記就業規則の各規定に該当するものとして申請人を解雇することは不当と考えられる。 〔解雇―解雇事由―第三者得意先からの苦情〕 証人Aの証言によれば、Aが被申請人協会の得意先たるB株式会社へ行った際同人は同社の人から申請人の服装や態度につき注意されたこと、又他の得意先からもAが申請人につき何らかの苦情を聞いたことが認められ右認定を覆すに足る証拠はない。しかし右のような事由については初ず申請人に改めるよう注意するなどの方法をとるべきであり、右事由が存することをもってただちに解雇理由としての就業規則第三九条第五、六、七号又は懲戒解雇理由としての就業規則第六四条第一〇号第一四号に該当するものとは認められない。 |