ID番号 | : | 00727 |
事件名 | : | 地位保全仮処分命令申請控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 京浜電測器事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 労働組合の金を横領したこと、その他生活費にも窮するような不健全な生活をしていること等を理由になされた懲戒解雇及び普通解雇は、解雇権の濫用であり無効であるとして地位保全の仮処分を申請した事例。(一審 認容、二審 控訴棄却) |
参照法条 | : | 民法1条3項,627条 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用 解雇(民事) / 解雇の自由 |
裁判年月日 | : | 1966年4月20日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和38年 (ネ) 1303 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 時報458号59頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇―懲戒権の濫用〕 使用者である控訴人会社が解雇権を有することはいうまでもないが、解雇権もまた他の権利とひとしく信義則にしたがって行使されるべきものである。そして、現在の社会経済事情のもとでは、労働者は雇傭されることによって受ける収入をほとんど唯一の生計の資とし、一たん解雇されたがさいご容易に再就職の機会をつかむことができず、たちまち生活の危機におちいるのが通例であるが、一方、使用者の側では、懲戒事由にあたる行為をした労働者との雇傭関係を続けることによって企業自体が危殆に瀕するようになるということは普通考えられず、これを解雇しても、通常、比較的容易に代わりの労働力を入手することができるのであるから、一般に解雇ということが労働者と使用者とに与える事実上の効果には比較にならぬほどの差異があるわけである。したがって、使用者は、解雇権を行使するに当っては、右の社会経済事情をじゅうぶん頭にいれたうえで懲戒事由にあたる非行の程度を検討し慎重に事を決すべきであり、いやしくも、その労働者を企業から排除しなくても企業の秩序がそこなわれるおそれがなくその合理的な経営を続けて行くことができると認められるかぎり、解雇というような思いきった処分に出ることはつつしむべきであり、このような場合あえて解雇の処分に出ることは、解雇権の濫用として許されないものと解するのが相当である。 〔解雇―解雇の自由〕 一般に使用者は解雇の自由を有するものと解すべきであるけれども、その行使は信義則にしたがってなされなければならず、濫用にわたることは許されないこと、さきに説明したとおりであって、このことはひとり懲戒による即時解雇の場合だけでなく予告解雇の場合にもあてはまることである。 |