ID番号 | : | 00753 |
事件名 | : | 地位保全仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 日本市場調査事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 勤怠不良、無断欠勤等を理由に懲戒解雇された組合役員らが、右勤務態度は会社側による組合員に対する暴行、脅迫行為に起因するもので、右解雇は不当労働行為、解雇権濫用、懲戒規定の不存在等のため無効であるとして地位保全等求めた仮処分申請事件。(地位保全、賃金仮払のみ認容) |
参照法条 | : | 民法1条3項 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度 就業規則(民事) / 就業規則の適用対象者 |
裁判年月日 | : | 1970年4月20日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和43年 (ヨ) 2317 |
裁判結果 | : | |
出典 | : | 労経速報722号16頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔就業規則―就業規則の適用対象者〕 A会社がB会社の全額出資により設立された会社であることは前述のとおりであり、成立に争いのない疎甲第六号証の一、二、同第一一号証、申請人X1、被申請人A会社代表者C各本人尋問の結果によれば、A会社が昭和四二年一一月二一日肩書地に移転するまではB会社と同じ場所にあり、当初は両会社とも代表取締役は同一人で、B会社と前記各傍系会社とは業務運営上相互に密接な関連をもち、B会社が全体の人事をも含めた統轄的な管理を担当し、その管理の下に、A会社等の傍系会社が現業部門としての営業活動を行っており、これらは組織上一体の関係にあって、右会社間においては、従業員の配置転換があたかも同一会社内における配置転換と同じように相互に自由に行われていたこと、傍系会社にはいずれも就業規則はなかったが、B会社の就業規則の定めに従って事務を処理してきたことが認められ(右認定に反する疎明はない。)、右事実によれば、A会社では慣行としてB会社の就業規則を適用してきたものということができ、このような場合には、B会社の就業規則はA会社にもなお妥当するものというべきである。 〔解雇―解雇事由―勤務成績不良・勤務態度〕 前認定の暴行、脅迫行為の全過程を通じて、申請人両名が出社して労務を提供することにより、身体に危険を及ぼす程の客観的危険は存在せず、右両名の主観的危険観もそれのみによって両名の出社を懈怠せしめるに足りる程の強いものではなかったと解するのが相当である。そうすると、右危険は、申請人らの欠勤の相当条件となり得ないことは明白であるから、右認定の暴行脅迫行為を理由としてA会社の出勤の催告にも拘らず欠勤を続けた申請人らの行為は、これを正当化する理由があるものということはできないから、申請人らの行為は前記四三条一号、七号、八号のいずれかの懲戒事由に該当するものというべきである。しかしながら、一方、会社側は、前記認定事実で明らかなように組合結成直後に組合役員をはじめとして組合員多数を解雇するなどして組合に対して明らさまな攻撃を加えて、支配介入による不当労働行為を繰り返して行い前記暴行、脅迫行為も (中 略) 間接的には会社側が手を下したものと評価しうる関係にあることから考えると、組合書記長たる申請人X1及び執行委員たる申請人X2が右各支配介入及び右暴行事件につき日本市場に対し不平不満を懐くに至ったことは容易に推認し得るところである。そうすると、右に判断したように、申請人両名の欠勤を正当化する程の主観的危険はなかったけれども右欠勤は、かかる程度の危険観と右不平不満とが競合した結果というべく、申請人両名が右心的状態に陥入るに至ったことについてはA会社においてもその責任を負うべきことは労働契約関係における信義則上当然のことといわなければならない。しかるに、A会社は、会社の支配介入に抗議し、かつ暴行脅迫を行う者を排除することを要求している申請人らに対し暴行脅迫の事実はないとの白々しい不誠意な通告をして、何ら右危険な状態を解消するための方策を申請人両名に示すこともなしに出社するよう催告しただけで、申請人らを懲戒解雇という重大な処分に付することによってその責任を問うことは、信義則上到底許されないものというべきである。 (中 略) 結局本件各解雇は何ら正当な理由なしになされたものというべく、申請人ら主張の解雇無効原因について判断するまでもなく、解雇権の濫用として無効であるというべきである。 |