全 情 報

ID番号 00763
事件名 雇用関係存在確認請求事件
いわゆる事件名 米軍極東管区事件
争点
事案概要  駐留軍労働者が、政府と米国政府との間で締結されていた基本労務契約所定の解雇基準に基づき解雇されたのに対し、右解雇は地区労の事務局長たる夫の組合活動を嫌悪してなされた不当労働行為にあたり無効である等として雇用関係の存在確認等求めた事例。(請求認容)
参照法条 民法1条3項,627条
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 保安解雇
解雇(民事) / 解雇権の濫用
裁判年月日 1971年4月28日
裁判所名 横浜地
裁判形式 判決
事件番号 昭和41年 (ワ) 724 
裁判結果
出典 労働判例133号6頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔解雇―解雇事由―保安解雇〕
 乙第一号証(基本労務契約書)によれば、基本労務契約に定められた保安基準は、駐留軍労務者の解雇が客観的に妥当な基準によるべきものとして定められたものであって、米軍の主観的な所為による解雇を抑制しようとする趣旨に出たものであるが、特定の駐留軍労務者が保安基準に該当するものとしてこれを解雇することができるかどうかは、最終的には、米軍の認定に委ねられており、日本国政府としては、米軍の最終決定において考慮されるべき情報を提供し、(中 略)。
 あるいは反対意見を表明して、米軍の十分にして、公平、慎重な審査に資し、再考を促すことはできるが、米軍において当該労務者が保安基準に該当すると判定して解雇措置を要求したときは、日本国政府は米軍の判定を尊重し、当該労務者を解雇しなければならないものであることが認められる。
 (中 略)
 したがって、本件において労管所長が、前記二の手続を経て、契約担当官代理者の解雇措置要求に基づいてなした本件解雇の意思表示は、原告が保安基準b項に該当することが認められないからといって、無効とすることはできない。
 〔解雇―解雇権の濫用〕
 原告につき本件解雇の理由とされた保安基準b項該当の事実を認め難いことと上記1ないし4の事実を合わせ考えると、反対の事情が認められない以上、本件解雇は原告の夫Aが横浜地区労の事務局長としてその事業活動の中心的存在の一人であることに着目し、妻である原告を通じて、原告の職場を含む駐留軍労務者の間に一層活発な労働組合運動が展開することを未然に防止する意図をもって、(中 略)。
 長年誠実に米軍業務のために働いてきた原告を職場から排除しようとしてなされたものと認めるほかなく、本件において他に原告を解雇しなければならない真因として首肯しうる事実はまったく窺い得ないのである。かかる解雇権の行使は権利乱用の謗りを免れず、したがって本件解雇の意思表示は無効であるとしなければならない。