ID番号 | : | 00776 |
事件名 | : | 地位保全仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | ゼネラル石油精製事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 勤怠状況不良、沖縄返還に関する抗議行動への参加による逮捕、勾留等を理由に、就業規則に基づき解雇の意思表示を受け就労を拒否された従業員らが、雇用契約上の地位保全賃金仮払の仮処分を申請した事例。(申請一部認容) |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項3号 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 逮捕・拘留 |
裁判年月日 | : | 1973年6月9日 |
裁判所名 | : | 横浜地川崎支 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和47年 (ヨ) 108 |
裁判結果 | : | 一部認容 |
出典 | : | 労経速報826号22頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 中嶋士元也・ジュリスト567号108頁 |
判決理由 | : | 本件就業規則第七条第一項第二号は、所定事由に該当する従業員につき、通常ならば解雇すべき場合に当るのであるが、その定める期間の限度で解雇を猶予し、右期間内にその定める事由が消滅すれば復職させ、右事由が消滅しないまま右期間を経過した場合にはじめて就業規則第一一条第一項第一号に基づいて解雇し、もってその労働契約を終了させようとする制度を採用したものと解するのが相当である。しかして、就業規則は、その作成届出義務を定めた労働基準法第八九条、その効力を定めた同法第九三条等労働基準法の精神からして、労働条件に関し労働者の利益のための片面的強行性をもって労働関係を拘束すると解するのが相当であるから、本件就業規則が前記のような休職制度を採用している以上、会社従業員は、就業規則第七条第一項第二号所定の事由が生じた場合直ちに解雇されず、所定の期間解雇を猶予されるという利益を有するというべきである。右就業規則に基づく休職の措置はなお、会社の裁量に属するといえるが、しかし会社の右裁量も前記のとおり就業規則のもつ労働者の利益のための片面的強行性に拘束されるというべきである。他方、本件就業規則が会社従業員に対する解雇事由を列挙していることは前記のとおりである。しかして本件就業規則自体が前記のとおり解雇猶予の機能をもつ休職制度を採用している点および右休職制度を受けて解雇事由中に「第七条第一項第一号および第二号により休職となった者が休職期間満了までに復職の命を受けなかったとき、当該従業員を解雇する」(第一一条第一項第一号)旨規定している点を総合するならば、「会社の都合によるとき」(第一一条第一項第五号)なる解雇事由は、その包括的文言にもかかわらず、その内容は右第一一条第一項第一号によって制約され、右第一一条第一項第一号に規定する部分については適用すべきでないと解するのが相当である。 本件就業規則に定める休職の各事由は前記のとおりである。しかして、右就業規則第七条第一項第二号が、その文言上、傷病以外の理由による欠勤と定め、傷病のみを除外事由としている点、右規定に基づく休職が前記のとおり解雇猶予の機能をもつものである点および右休職制度を採用している本件就業規則が前記のとおり労働者の利益のための片面的強行性を有するとの点を総合勘案すれば、右規定に定める欠勤は、右規定第一号および、第三ないし第五号に定める欠勤を除いた、すべての欠勤をその対象とすると解するのが相当である。 前記(二)において説示した当裁判所の見解によれば、会社としては申請人等が前記逮捕勾留された日から起算してその欠勤が引続き就業規則第七条第一項第二号に定める一箇月の期間を経過した時点において、申請人等につき右規定に基づく休職に付すべきか否かを検討すべきであったといえる。しかるに会社は何等右検討に着手することなく昭和四七年二月九日にいたり、前記認定の解雇の理由とする各事実が直ちに就業規則第一一条第一項第五号に該当するとし、その事由のみに基づき本件解雇の意思表示をしたものである。 (ニ)会社が、本件就業規則に従業員の解雇事由を列挙している以上、会社が従業員を解雇する場合には、その解雇事由に拘束されるというべきである。 2 右説示して来たところからすれば、結局会社の申請人等に対する本件解雇は、就業規則の適用を誤ってなされたものであり無効というほかなく、申請人等のこの点に関する主張は理由がある。 |