全 情 報

ID番号 00789
事件名 地位保全等仮処分申請控訴
いわゆる事件名 滋賀マツダモータース事件
争点
事案概要  業績挽回を目的とする機構改革による人事に不満を抱き、社長、取締役との話合いが不調に終った労働者が、就業規則にもとづいて解雇通知を受けたので、解雇は違法であるとして、従業員としての地位保全等の仮処分を申請した事例。(一審 申請棄却、当審 控訴棄却)
参照法条 民法1条3項,627条
労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 解雇権の濫用
裁判年月日 1975年1月17日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和44年 (ネ) 263 
裁判結果 棄却
出典 労働判例220号19頁
審級関係
評釈論文 毛塚勝利・労働判例220号13頁
判決理由  民法第六二七条は期間の定めのない雇傭契約については当事者のいずれの側からでも自由に解約できるものと定めているのであって、実定法上使用者の側からする解雇についてのみ正当事由を必要とするものと解すべき根拠はない。すなわち、使用者も原則として労働者を自由に解雇することができるのであって、ただ労働組合法及び労働基準法の解雇制限に関する定めに違反した場合、使用者が自ら解雇の自由を制限した就業規則等の規定に違反した場合並びに解雇が権利の濫用にわたる場合等にのみ当該解雇が無効とされるのに過ぎないものと解するのが相当である。従って、本件解雇に正当の事由がないことを理由としてその無効をいう控訴人の右主張は、主張自体理由がないものとする外はない。
 (中 略)
 被控訴会社は莫大な赤字を克服するため社運をかけて機構改革を実施しようとし、これに伴う人事異動に他の部課長はすべて異議なく応じて会社の業績挽回に取り組もうとしていたに拘らず、ひとり控訴人のみが、差当っては従来の地位にとどめるが近い将来には湖南中古車センター長に就任させると特に将来の地位まで約束されながら、格別不利益な人事異動でもないのに一且した承諾を翌朝にはひるがえし、社長はじめ前記各取締役等の二日に亘る説得にも頑なに耳をかさず、右人事異動に応じなかったのであるから、その時期からみても控訴人の地位からしても、控訴人の右所為が他の従業員に及ぼす影響は少くなく被控訴会社の業績挽回にも支障を生ずる虞があったものと考えられ、これを前記就業規則第六一条第一項第三号にいう「やむを得ない業務の都合による時」に準ずるものとして同第五号の適用を受けてもやむを得ないものと認められる。