ID番号 | : | 00809 |
事件名 | : | 解雇無効確認請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 九州電力事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 定例日に電力使用量を検針しなかった委託検針員との委託検針契約を解除した電力会社に対して、労基法上の労働者としての解雇の無効確認が求められた事例。(一審 請求認容、二審 控訴棄却、請求棄却) |
参照法条 | : | 労働基準法20条1項,89条1項3号 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度 |
裁判年月日 | : | 1978年9月13日 |
裁判所名 | : | 福岡高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和50年 (ネ) 148 |
裁判結果 | : | 棄却(確定) |
出典 | : | 労働民例集29巻5・6合併号674頁/労経速報1000号40頁/労働判例312号73頁 |
審級関係 | : | 一審/00091/福岡地小倉支/昭50. 2.25/昭和46年(ワ)617号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 控訴人は、なお、権利濫用の理由として、控訴人が過去において二回被控訴人に始末書を差し入れた事実はあるが、右は始末書に価しないに拘らず、被控訴人の強制により差し入れた旨主張するが、右主張に副う原審及び当審における控訴本人尋問の結果は叙上認定と対比して信を措きがたく、他に右主張を認めるべき証拠は存しない。 却って、叙上四認定のとおり、控訴人は、昭和四三年同四四年の二回にわたり、検針員としての職務上の義務に違反し、その都度始末書を提出し、特に第二回目の始末書においては、今後再び不都合があった時は、契約を解除されても異議はないとまで誓約しておきながら、今回またもその本来的業務である検針を一部怠って定例日制を一部崩し、被控訴人会社の業務の円滑な遂行を妨げたという過去の経緯に加えて、控訴人は、被控訴人会社の存立の基盤となる電力代金収入の算出のため不可欠な検針部門を担当するものであるから、少くとも被控訴人会社に対し誠実、正確な検針を行ってこれを報告し、また需要家に対しても、定期的に正確な電力消費量を告知することにより、被控訴人会社の電力供給業務への信頼を確保することが、その本質的義務として要請されると言うべきであり、且つ控訴人自身、定例日制を前提として検針業務に従事することを約諾したにも拘らず、格別の理由なく定例日制を無視する態度に出たことは、それ自体、被控訴人会社の社会的信頼を損ない、損害を与える行為であって、委託検針契約を支える被控訴人会社との信頼関係を破壊するものといわなければならず、被控訴人会社が同契約第八条に基いてなした委託検針契約解除の意思表示は、正当な理由があり、有効であるといわなければならない。 更に、控訴人は、控訴人が労働基準法上の労働者であることを前提として、被控訴人の契約解除の意思表示は労働基準法第二〇条第一項に違反して無効である旨主張するが、前認定の事実に徴すれば、本件の契約解除は、同法条第一項但書にいう「労働者の責に帰すべき事由に基づく」場合であることが明らかであるから、仮に控訴人が労働基準法上の労働者であるとしても、被控訴人会社が控訴人を解雇するに当り解雇の予告は不要である、といわなければならない。従って控訴人が労働基準法上の労働者であるか否かを問うまでもなく、この点の控訴人の主張もまた採用の限りではない。 以上の次第であって、被控訴人が控訴人に対してした委託検針契約解除の意思表示は、控訴人が労働基準法の労働者であるか否かを判断するまでもなく、有効であり、その無効を前提として被控訴人会社の検針員たる地位の確認を求める控訴人の本訴請求は、理由なきものとして棄却を免れない。 |