ID番号 | : | 00823 |
事件名 | : | 従業員地位保全仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 住友重機浦賀造船所事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 病弱のため業務に耐えないことを理由に使用者がなした解雇につき、右理由には該当せず、又解雇権の濫用であるとして、従業員としての地位の保全を求めた仮処分事例。 |
参照法条 | : | 民法1条3項 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 病気 |
裁判年月日 | : | 1980年6月18日 |
裁判所名 | : | 横浜地横須賀支 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和54年 (ヨ) 45 |
裁判結果 | : | 却下 |
出典 | : | 労働判例345号49頁/労経速報1055号3頁 |
審級関係 | : | 控訴審/東京高/昭55.12. 3/昭和55年(ラ)768号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 前記の事実関係からすれば、債権者は、本件解雇当時就業規則五〇条一号に該当していたものと判断される。すなわち、 同号の「業務」とは従業員が雇用契約上就労すべきであるとされている業務のみならず、債務者会社が契約上従業員に就業を命じることが可能な業務を含むものと解すべきである。 (中 略) このような債権者の病気の特質、罹患後の経過、罹病期間の長さ、復職後の就労状況等を総合すれば、債権者は、本件解雇当時、将来にわたって、安定した労務を提供しうるとはいえない状況にあり、かつ、提供できる労務の内容も、本来の業務である取付職の業務よりも軽い作業に限定され、かつ、提供しうる労務の量も通常人に比して少なかったと考えられる。 他方、債務者会社の経営状況は昭和四八年以降悪化し、特に船舶部門において受注の減少等により大幅な人員削減を余儀なくされ、昭和五三年には横須賀地区事業所の人員を約二三パーセント減らす人員削減計画を立て、退職を求める勇退基準を作成して該当者に退職を説得し、昭和五四年二月一〇日現在で七五五名を退職させたが、その時点で七一名の社内未達成人員があり、債務者会社はなお、減量経営をめざしていた。 このように、債務者会社における経営状況の悪化は著しく、債権者よりも勤怠状況が良好と認められる者が人員削減計画によって退職を余儀なくされており、残った従業員の労務状況もまた厳しいものであったことがうかがえる。 以上の諸事情を総合すれば、債権者は、本件解雇当時、将来にわたって提供しうる労務は、本来の業務より軽い、限定されたもので、その量も少なく、かつ、安定していなかったもので、債務者会社の経営状態からこのような労務に見合った業務を債権者のため設ける余裕はなかったもので、他の従業員との公平の見地からも債権者に就労を命じることが可能な業務は存在しなかったものと考えるのが相当である。 (中 略) (参 考) 就業規則五〇条一号(精神又は身体に故障があるか、又は虚弱、疾病等のため業務に耐えないと認めたとき) |