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ID番号 00833
事件名 仮処分異議控訴事件
いわゆる事件名 鈴江特許事務所事件
争点
事案概要  使用者がなした懲戒解雇および予備的普通解雇につき、権利の濫用である等として雇用契約上の権利を有する地位にあることを認めた原決定の取消を求めた仮処分異議控訴の事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 犯罪の嫌疑
裁判年月日 1981年12月22日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和55年 (ネ) 2392 
裁判結果 棄却(確定)
出典 労働民例集33巻1号1頁
審級関係 一審/00825/東京地/昭55.10. 1/昭和52年(モ)6887号
評釈論文
判決理由  「特許申請が一般に秘密を要するものであることに加えて、控訴人は、A会社の時代の最先端を行く技術開発に関与し、高度の企業秘密に触れる立場にあったのであるから、控訴人と東芝との間には特別の信頼関係が維持されることが必要であったと考えられる。しかるに、本件解雇当時、控訴人は、起訴を免れていたとはいえ、その嫌疑を晴らすに足る釈明はなく、少なくとも、控訴人と共産同エルゲー派との間に何らかの関係が存するという疑いを払拭しきれない状況にあったものということができ(嫌疑不十分による不起訴処分があったことも、この疑惑を完全に解消させるものとは認められない。)、A会社において、控訴人とエルゲー派との関係を疑い、控訴人が被控訴人に雇用されている限り、これに従来どおり出願事務等の依頼をすることに危惧の念を抱くのもやむをえないことであり、したがって、被控訴人において、その主宰する特許事務所と最大の顧客の間柄にあるA会社との関係を維持するため、A会社の意向に沿いその危惧を除去する手段として、控訴人を解雇せざるをえないと判断したことも、首肯しうることである。すなわち、右のような顧客との信頼関係の維持に特別の配慮を要する被控訴人の業務の特殊性と、控訴人が従前A会社の企業秘密の中枢に関与していた事情とに鑑み、かかる解雇は、業務上の必要に基づくものと認めることができる。」