ID番号 | : | 00836 |
事件名 | : | 賃金仮払い・地位保全仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 日本電建事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 勤務成績が不良である等を理由として解雇された申請人が地位保全及び賃金支払の仮処分を求めた事例。(却下) |
参照法条 | : | 労働基準法39条4項 民法1条3項 |
体系項目 | : | 年休(民事) / 時季指定権 / 指定の方法 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度 |
裁判年月日 | : | 1982年2月26日 |
裁判所名 | : | 名古屋地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和53年 (ヨ) 1682 |
裁判結果 | : | 却下 |
出典 | : | 労経速報1120号17頁/労働判例386号33頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔年休―時季指定権―指定の方法〕 3 労働者の年休権は一定要件のもとで法律上当然に生ずるものであるが、その時季指定を書面によらしめる本件就業規則の定めは、年休権行使の意思及び休暇の始・終期を明確にする目的を有するものであって合理性を有し、緊急時の行使につき事後による書面提出を認めている点から判断すると年休権の行使に事実上制限を加えるものではなく、右手続規定は有効と解される。すると右手続をとらない以上申請人には年休は成立せず、従って申請人は被申請人主張のとおり昭和五三年七月二八日から同年八月二五日までの間に通算二二日間欠勤したものと一応認めることができる。 〔解雇―解雇事由―勤務成績不良・勤務態度〕 (二) ところで、申請人は、入社後三年目頃から二六期(昭和五〇年度)まで名古屋支店内においてトップクラスの成績を続け、この間成績優秀で社長より表彰されたこともあり、昭和四七年頃には課長代理にまで昇格した。次いで、二七期は、前年度に比べ請負高がほぼ半減したとはいえ、名古屋支店内における順位は三九名中一九位(対象人員は、名古屋、一宮、熱田三店の営業社員数、但し、営業見習社員及び社員登用後二年未満の者を除く)で、前記の最低請負高を充分越えていた。ところが、二八期に入って昭和五二年八月から急激に成績が落込み始め、結局二八期の年間請負高は前記最低請負高を大きく下回る二七六〇万円(昭和五二年八月から同五三年三月までの間に限ると六四〇万円)しか挙げることができず、名古屋支店内における順位は三六名中三二位であった。右のような成績不良のため昭和五二年一二月頃には課長代理から主任に降格されるに至ったが、二九期に入っても成績は依然として低迷を続け、昭和五三年四月から本件解雇時である同年八月末までの四ケ月間の請負高は僅かに六七五万円(名古屋支店内における順位は三三名中三一位)に過ぎず、申請人が同年四月に支店長宛の書面において二九期第一四半期の目標として掲げた最低請負高二四〇〇万円を達成することができなかった。 (中 略) (三) 申請人の成績が二八期中頃から急激に落込んだ主たる原因は、申請人が前認定のように多額の負債の返済に追われ、本来の営業活動を殆どなし得なかったためであった。 (中 略) (証拠略)によれば、被申請人の就業規則六八条一項には、「従業員が次の各号に一に該当するときは、退職または解雇とする。」として、その九号に「業務成績いちじるしく不良につき、向上の見込みがないと認めたとき」、その一一号に「前各号のほか、従業員に解雇に値する重大な理由があると認めたとき」と定められていることが一応認められる。 そして前記三項において認定した事実によれば、申請人は、本件解雇当時成績が著しく不良であり、同項の事実に前記二項及び四項において認定した事実を総合すると、向上の見込みがなかったものと一応認めることができる。 すると右認定にかかる申請人の成績不良は就業規則六八条一項九号に該当することが明らかである。 七 権利濫用の主張について 前認定の諸般の事情を総合考慮すると、本件解雇は、被申請人の職場秩序の維持、信用保持、採算維持及び業務の円滑な運営を図るためになされた誠にやむを得ない措置というべきであり、社会通念からしても充分是認し得るものである。申請人は、被申請人において、本件解雇前申請人を教育指導しなかったことを指摘するが、本件成績不良の原因となった個人的負債は当該個人がその債権者との間で解決すべき問題であり、使用者が借財整理に助力しなかったことをもって使用者としての義務不履行ないしは不相当な行為と評価することはできない。すると右個人的負債が原因となって営業活動が阻害され、結局営業成績不良を理由に解雇されるに至った本件は、解雇権の濫用ということはできない。 |