全 情 報

ID番号 00840
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 慈恵大事件
争点
事案概要  頚肩腕症候群のため休業していた小児科外来勤務の准看護婦が、右疾病を業務外疾病として扱われ、療養休職期間満了により一般退職とされたのに対し、右疾病は業務上のものであり、右一般退職扱いは労働基準法一九条に反し無効であるとして、労働契約上の地位の確認等求めた事例。(請求棄却)
参照法条 労働基準法19条
体系項目 解雇(民事) / 解雇制限(労基法19条) / 解雇制限と業務上・外
裁判年月日 1983年2月28日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和51年 (ワ) 11493 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 時報1077号135頁
審級関係
評釈論文
判決理由  前記一ないし四及び五の1ないし6で認定・説示した点、とりわけ
 (一)原告の作業環境は、特に本件疾病の原因となるほど劣悪であるとはいえないこと
 (二)作業の内容及び態様も、一定の作業を一定の固定された姿勢を持続して繰り返し行うものではなく、診察の介助、その間に書字作業、また必要に応じ、隣室の受付、処置室にも移動するというもので、混合作業と評価すべきものであること
 (三)原告が特に問題としている書字量は、一般の事務作業に比較して特に多いとはいえないこと
 (四)かえって、原告が通学していた大学での講義の書字量の方が多いと推認されること
 (五)原告は小児科外来での業務により本件疾病になった旨主張するが、小児科外来の仕事が外科病棟の仕事よりも厳しいとはいいきれないこと、むしろ青戸分院では一般的には外来勤務の方が楽であるといわれていること
 (六)小児科外来の業務から離れても、長期間軽快しなかったこと、業務を離れてからは、肘の症状よりはむしろ頚を中心とした症状を呈していること
 (七)右症状を改善するために、A医師はトフラニールの投薬を中心とした治療を行っていること、右トフラニールの投薬量が途中から増加されていること
 (八)原告は外科病棟勤務時は健康であった旨主張するが、前記五の2認定のとおりの既応歴があり、小児科外来勤務後も急性腸炎、感冒、胃炎、遊走腎の疑い、腎炎、気管支炎、潰瘍性大腸炎の病名で青戸分院で治療を受けており、特に本件疾病で病欠する前の月である昭和四九年九月には潰瘍性大腸炎にかかり、体力の低下が窺われること
 (九)原告の主張する繁忙期の疲労は、いずれも直前直後の休日によって回復したとみられること
 (一〇)小児科外来では看護助手のBが頚腕症候群と診断されているが、右疾病が業務に起因するかどうかはさておき、右Bの業務と原告の業務は同一と評価できないこと
 (一一)原告がした労災保険給付申請につき、向島労働基準監督署長は本件疾病がその業務に起因することが明らかな疾病とは認められないとして不支給処分をなし、さらに原告がしたその審査請求、再審査請求のいずれも棄却されていること等を総合すると、原告の本件疾病がその業務に起因しているものと認めることはできない。