ID番号 | : | 00844 |
事件名 | : | 解雇無効確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 国際交通事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 社内の仮眠室での不法居住、勤務態度不良、業務中の交通事故、会社施設内での暴力事件を理由に普通解雇されたタクシー運転手が、右普通解雇は就業規則の懲戒解雇規定に基づくものであり許されず無効である等として従業員としての地位確認等求めた事例。(請求棄却) |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒解雇の普通解雇への転換・関係 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度 |
裁判年月日 | : | 1984年1月26日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和56年 (ワ) 8674 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労経速報1190号14頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇―懲戒解雇の普通解雇への転換〕 このような被告の就業規則における普通解雇及び懲戒解雇に関する規定に照らすと、被告が昭和五五年六月一〇日にした解雇の意思表示は、就業規則四一条の規定を掲げているところからみると懲戒解雇のように見える一方、三〇日以上の解雇予告期間をおいて解雇の予告をしているところからみると普通解雇のようにも見えるのであって、どちらか一方であると決し難いといわなければならず、このような場合には、当事者の合理的な意思を推測すれば、被告がいずれか一方に固執する趣旨と認められる特別の事情のないかぎり、懲戒解雇及び普通解雇の双方の性格を有するものと解するのが相当である。このように解すると、解雇の意思表示を受けた相手方の地位を不安定にするとの批判が予想されるけれども、懲戒解雇の意思表示と普通解雇の意思表示を予備的又は選択的にすることが許されないことはなく、また、懲戒解雇の事由が存する場合にそのことを理由として普通解雇をすることも許されると解されていることからすれば、右の批判は当らないというべきである。 〔解雇―解雇事由―勤務成績不良・勤務態度〕 まず、仮眠室での居住については、原告の外にも仮眠室で居住する従業員がおり、被告の退去要求もそれほど強硬なものではなかった点において、原告ひとりを責めることは適切でないが、仮眠室を本来の目的以外に長期間にわたって使用して改めようとしないことは、被告会社の秩序を乱すものと評価しなければならない。次に、原告の勤務態度についてみると、原告は格別の理由もなく無断欠勤や早退を繰り返して被告に業務上の支障を与えており、その結果乗務回数も被告会社の標準を相当下回っていること、また、解雇より二年以上前のことではあるが、長期にわたり被告との連絡をとらずに行方不明になったことや休憩室に一升瓶を持ち込んで飲酒しながら高校野球のテレビ観戦をし注意されてもやめないことは、従業員としての基本的な執務態度が不良であるといわざるをえないし、業務中の交通事故の発生率が他の従業員の平均を大きく上回ることも勤務成績を現わす一つの指標として考慮されなければならない。更に、二度にわたり会社構内で他の従業員らとけんかをしたことは、原告が一方的な被害者とは認められない限り、その原因が何であるにせよ、原告にも責任の一端があることは否定できない。 これらの事実を総合して考えてみると、被告が企業経営上の見地から原告を解雇しようとすることにつきやむをえない事由があるといわざるを得ず、前記の普通解雇に関する就業規則二八条二号の「止むを得ない事実上の都合」がある場合に該当するものと認められる。 従って、本件解雇は就業規則に定める普通解雇の事由を具備しており、解雇権濫用等解雇の有効性を妨げるべき事実は存しない。 |