ID番号 | : | 00863 |
事件名 | : | 賃金仮払等仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 海上電気事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 時間内組合活動を理由として賃金カットを受けた組合員らが、右賃金カットは時間内組合活動を認め一切の不利益取扱いをしない旨の協約、労基法二四条に違反し無効である等としてカットされた賃金の仮払等求めた仮処分申請事件。(申請却下) |
参照法条 | : | 民法624条 労働基準法24条 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 争議行為・組合活動と賃金請求権 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / 過払賃金の調整 |
裁判年月日 | : | 1968年9月20日 |
裁判所名 | : | 東京地八王子支 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和43年 (ヨ) 399 |
裁判結果 | : | |
出典 | : | 労働判例70号60頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金―賃金請求権の発生―争議行為・組合活動と賃金請求権〕 元来、労働契約は、労働者が一定種類の労働力を一定時間使用者に提供し、使用者はその労働力の対価として賃金を支払うことを内容とする契約であって、使用者はその支配下に労働力を置くことによって労働者を具体的労働に従事させうるのであるから、使用者の支配下に労働力を提供しない場合には労働契約の履行は果されていないのでその対価としての賃金債権も発生しないのである。 時間内に組合活動を行う場合は当該労働者の労働力は使用者の支配圏から脱し、したがって労働力の提供は行われていないのであるからこれに対する賃金債権も発生しないのは当然である。 〔賃金―貸金の支払い原則―過払賃金の調整〕 ところで本件カットは、別表のとおり昭和四三年四、五月分の過払賃金を六月に、六月分の過払賃金を七月にそれぞれカットしたものであって、その控除の方法については同法にいう全額払に違反するとの疑がないとはいえない。 (中 略) しかし本件のように、賃金支払日が当月の賃金締切日の前に定められる賃金前払制をとる場合には、当該支給日に支払われる賃金は当然に概算払的性格を有するのであり、もし当月において賃金として発生しないものがあれば、それをつぎの支給日において清算することは、その概算払的賃金計算方法に内在する当然の帰結であって労働者としては結局、賃金全額の支払を受けていることに変りはないのである。本来同法二四条に定める全額払いの原則は、確定的に発生した賃金を他の債権によって相殺することを禁じたものであって、右に述べたような意味における賃金清算をも禁止していると解すべきではない。 |