全 情 報

ID番号 00888
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 下津井電鉄事件
争点
事案概要  乗務中に競艇の出走表を出して熟視しながら運転したことが就業規則所定の職務上の義務違反にあたるとして諭旨解雇された労働者が、解雇の効力を停止する仮処分決定を得たのに対し、会社が右労働者に休業を命じ平均賃金の六〇パーセントの賃金を支払っているのに対し、賃金全額支払の仮処分を申請した事例。(申請認容)
参照法条 労働基準法24条,26条
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / バックペイと中間収入の控除
裁判年月日 1955年7月18日
裁判所名 岡山地
裁判形式 決定
事件番号 昭和29年 (ヨ) 65 
裁判結果
出典 労働民例集6巻5号706頁/労経速報186号2頁
審級関係
評釈論文
判決理由  ところで解雇の効力を停止する旨の仮処分決定が有効に存在する以上、使用者は解雇された労働者を解雇されなかったと同様に待遇すべきものであることは言を俟たない。被申請人は右仮処分のなされた直後申請人に対し「休業」を命じ平均賃金の百分の六〇を支払っているのであるが、労働基準法二六条の規定は通常使用者の経営上の都合等で特定の工場又は職場においてある程度一般的に休業をし事実上特定の労働者に職を与え得ない場合に限って適用があるもので、本件のように申請人が解雇の効力を停止する旨の仮処分を得た上就労の申込をしたのに対し、申請人に対してのみ「休業」を命じ、就労を拒否する場合に適用のないことは明らかであるばかりでなく、被申請人がさきの解雇事由を再びとらえて申請人に対し就業規則にも定のない「休業」を命じ就労を拒否することは実質上申請人を無期限出勤停止なる懲戒処分に付するのと何等択ぶところなく、かくては前記仮処分の趣旨は全くふみにじられる結果となり、被申請人の処置の許さるべきものでないことは明らかである。
 もっとも、それが仮処分後生じた新な原因に基いてなされたというならば別論であるが、本件においてはそのような事情を認むべき疎明資料はない。そして右仮処分に対しては被申請人から異議申立がなされたが(当裁判所昭和二八年(モ)第一四一号事件)これに対し当裁判所が昭和三〇年三月三〇日右仮処分決定を認可する旨の判決を言渡したことは職務上顕著な事実であるから、被申請人は申請人に対し賃金全額を支払うべき義務あるものといわねばならない。