ID番号 | : | 00894 |
事件名 | : | 仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 田中電機製作所事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 勤務不良、器物損壊等を理由に解雇された労働者が右解雇の動機は被解雇者の過去の組合活動歴を嫌悪したことにあり不当労働行為であるとして地位保全、賃金仮払の仮処分を請求した事例。 |
参照法条 | : | 民法536条2項 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 無効な解雇と賃金請求権 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / バックペイと中間収入の控除 |
裁判年月日 | : | 1962年5月11日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和34年 (ヨ) 2688 |
裁判結果 | : | |
出典 | : | 労働民例集13巻3号596頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 久保敬治・判例評論53号4頁 |
判決理由 | : | 右法条(民五三六条二項但書)にいう「債務を免れたるに因り得たる利益」とは債務を免れたこと自体から直接得た利益をいうものであって、債務の免脱を利用して得たものであっても別個の原因により得た利益つまり債務の免脱と相当因果関係のない利益は包含されないものと解するを相当とするところ、本件における申請人の前記解雇後の収入は、会社に勤めていてもなしうる程度の副業的な労務に従事したことによって得たものとはいいえず、従って、かかる収入は、会社に対する債務、すなわち労務給付義務を免れなかったならば得られなかったであろうという意味において、右債務免脱と収入との間には因果関係が存するもので、しかも前記の収入は労働者が就労した場合には、通常得られる程度のものであるといわなければならないけれども、一般に、現時の社会状態の下においては、解雇、ことに本件における如く組合運動を理由とする解雇により就業を拒否された者が、その解雇を争いながら、他に職を求めることの極めて困難であるとの顕著な事実と、かかる被解雇者が再就職することは、むしろ異常な努力をはらうことによってのみ可能であるという事実に照すときは、他へ再就職することによって得た収入は、労務給付義務を免れ、これにより得た時間を利用したのではあっても、これとは別個の原因、即ち新たな雇用契約を締結したことによって得た利益として、債務の免脱とは相当因果関係を有しないものと解するを相当とする。 |