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ID番号 00895
事件名 解雇無効確認等請求事件
いわゆる事件名 米極東空軍山田部隊事件
争点
事案概要  使用者の責に帰すべき事由により解雇された労働者が解雇期間中に他の職について利益を得た場合に、使用者が賃金を支払うに当り労働者は右利益を償還しなければならないか否かが争われた事例。
参照法条 民法536条2項
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / バックペイと中間収入の控除
裁判年月日 1962年7月20日
裁判所名 最高二小
裁判形式 判決
事件番号 昭和36年 (オ) 190 
裁判結果 棄却
出典 民集16巻8号1656頁/時報309号2頁/訟務月報8巻10号1481頁/裁判集民61号745頁
審級関係
評釈論文 下森定・法学志林60巻3・4合併号162頁/久保敬治・判例評論53号4頁/光岡正博・法律時報35巻2号98頁/渡部吉隆・ジュリスト260号44頁/渡部吉隆・法曹時報14巻9号136頁/島田信義・早稲田法学39巻2号235頁/片岡昇・民商法雑誌48巻5号735頁
判決理由  しかし、労働者は、労働日の全労働時間を通じ使用者に対する勤務に服すべき義務を負うものであるから、使用者の責に帰すべき事由によって解雇された労働者が解雇期間内に他の職について利益を得たときは、右の利益が副業的なものであって解雇がなくても当然取得しうる等特段の事情がない限り、民法五三六条二項但書に基づき、これを使用者に償還すべきものとするのを相当とする。
 ところで、労働基準法二六条が「使用者の責に帰すべき事由」による休業の場合使用者に対し平均賃金の六割以上の手当を労働者に支払うべき旨を規定し、その履行を強制する手段として附加金や罰金の制度が設けられている(同法一一四条、一二〇条一号参照)のは、労働者の労務給付が使用者の責に帰すべき事由によって不能となった場合に使用者の負担において労働者の最低生活を右の限度で保障せんとする趣旨に出たものであるから、右基準法二六条の規定は、労働者が民法五三六条二項にいう「使用者ノ責ニ帰スヘキ事由」によって解雇された場合にもその適用があるものというべきである。そして、前叙のごとく、労働者が使用者に対し解雇期間中の全額賃金請求権を有すると同時に解雇期間内に得た利益を償還すべき義務を負っている場合に、使用者が労働者に平均賃金の六割以上の賃金を支払わなければならないということは、右の決済手続を簡便ならしめるため償還利益の額を予め賃金額から控除しうることを前提として、その控除の限度を、特約なき限り平均賃金の四割まではなしうるが、それ以上は許さないとしたもの、と解するのを相当とする。