全 情 報

ID番号 00897
事件名 雇用契約存在確認等請求事件
いわゆる事件名 東京信用金庫事件
争点
事案概要  違法な争議行為を企画、決定、指導したとして懲戒解雇された組合役員および組合員が、右懲戒解雇は不当労働行為にあたり無効であるとして雇用契約の存在確認等求めた事例。(請求認容)
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 無効な解雇と賃金請求権
裁判年月日 1968年12月21日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和36年 (ワ) 4961 
裁判結果
出典 労働民例集19巻6号1643頁
審級関係
評釈論文
判決理由  金庫と組合間に各年度ごと、原告ら主張のとおりの昇給協定(内容については別表一のとおり)が結ばれていることは当事者間に争いがなく、また弁論の全趣旨によれば、その協定の昇給基準は金庫の従業員たる組合員のすべてに適用されるものであること、基準の詳細部分には、金額につき、たしかに金庫の裁量が働く余地があることもうかがわれる。しかし、同じく弁論の全趣旨によれば、右裁量部分については、それぞれの昇給時期において、その当時の従業員の勤怠等を勘案してあるいは平均額に一定の割合を上積みし、あるいは減額することを普通とするものであること、しかるに原告らは就労を拒否されていた結果、各自につき裁量の基礎とすべき実績および推定すべき資料がなく、右裁量の余地もなかったことがうかがわれる。従って、そもそも、会社の責に帰すべき事由により就労を拒否され、かかる事態が生じたのであるから、裁量部分につき原告ら主張のように、その平均ランクをとり、これを原告らの昇給に対して適用して、機械的に算出しても不都合はなく、結局裁量部分をもすべて含め、個別的意思表示をまつまでもなく金庫と組合間の各協定により原告らに対しその効力が及ぶと解するのが相当である。
 原告らが定期昇給を受けうることについては、先に検討したとおりであって、賞与算出の基礎も定期昇給後の各年度の賃金額を基準とすべきものである。また、原告らの主張する考課配分も、弁論の全趣旨によれば、とくに別表二において一律とされていた場合を除き、会社の裁量によるものであるけれども、定期昇給における場合同様、それぞれの賞与支払時期において、会社が、従業員勤怠等を勘案して、一定の上積みをするものであること、しかるに原告らはいずれも就労を拒否されていた結果、各自につき裁量の基礎とすべき実績および推定すべき資料がなく裁量の余地がなかったことがうかがわれる。そもそも、会社の責に帰すべき事由によって就労を拒否され、その結果かかる事態が生じたのであるから、裁量部分につき、原告らの主張のように、全従業員の平均考課配分に従うことを相当とすべきであって、また、各従業員に対する個別的意思表示をまつまでもなく、組合と会社間の協定により、原告らに対し、その効力が及ぶものと解する。