全 情 報

ID番号 00901
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 東京新聞社事件
争点
事案概要  違法な職場占拠およびピケを企画、指導したとして懲戒解雇ないし懲戒休職処分に付された組合役員らが、右処分は懲戒権濫用にあたり無効である等として地位保全等求めた仮処分申請事件。(一部原告につき認容)
参照法条 民法536条2項
労働基準法89条1項9号
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 無効な解雇と賃金請求権
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動
裁判年月日 1969年10月18日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和40年 (ヨ) 2216 
裁判結果
出典 労働民例集20巻5号1346頁
審級関係
評釈論文 竹下英男・労働法の判例〔ジュリスト増刊〕194頁/島田信義・季刊労働法75号153頁/浜田冨士郎・ジュリスト468号160頁
判決理由  〔賃金―賃金請求権の発生―無効な解雇と賃金請求権〕
 (二)、申請人らの基準外給与の算出方法
 ところで「労働は他の商品と異り、貯蔵性がないから使用者が解雇や休職処分によりその受領を拒否した場合において、右処分が無効である場合には、民法四一三条の受領遅滞の観念を容れる余地がなく、危険負担に関する民法五三六条二項の規定の適用があり、同条項の「反対給付ヲ受クル権利」とは、損害賠償請求権ではなくして、双務契約より生ずる本来の賃金請求権そのものであることはいうまでもない。そして右賃金請求権の範囲は、賃金が一定額である場合にはその一定額であること勿論であるが、本件におけるように、基準外給与のような必ずしもその額が一定しない部分がある場合においても、それが極く例外的に支給されるのではなく、本件の如く恒常的に支給されている場合には、その部分もなお「反対給付ヲ受クル権利」の範囲に含まれるものと解すべきである。
 (中 略)
 本件解雇当時組合専従であった関係で、右申請人らが本件解雇当時平均いかほどの基準外給与を受けていたかを算定することは不可能である。しかしながら、前認定のように、会社においては基準外勤務は恒常化していたのであるから、もし右申請人らが組合専従を解かれた後に就業していたとすれば、基準内給与のほかに基準外給与の支払をも受けたであろうことは明白である。このような場合には、他の特段の事情なき限り、申請人らが主張のように、右各申請人らと同職場、同職種に勤務し、同人らと同一年次に入社した者の基準外給与の平均額をもって、その基準外給与額とするのが最も妥当であると考える。
 (中 略)
 本件において右申請人らについて基準外給与の平均額を算定する必要性は前述のとおりであり、この趣旨からすれば、右労働基準法第十二条の規定をも考慮して著しく不相当と認められない限り、適宜の期間をとってこれを算定することも許されるものと解する。本件において右申請人らは、昭和三九年四月分から昭和四〇年三月分までの基準外給与の平均をもって、同人らの基準外給与額としているのであるから、これをもって著しく不相当とは認められないのでこれを採用すべきである。
 〔懲戒・懲戒解雇―懲戒事由―違法争議行為・組合活動〕
 本件における一連の経過を眺めてみると、いずれも申請人らが組合員を煽動して違法行為に至らしめたというより下からのもり上りによって右のような事態に至ったという面があることも否定できないことをも併わせ考えると、会社がなした申請人X1、同X2、同X3、同X4に対する本件各懲戒解雇処分並びに申請人X5、同X6に対する懲戒休職(三カ月)の処分は、いずれも重きに失し懲戒権の濫用として無効であるというべきである。