全 情 報

ID番号 00905
事件名 地位保全賃金支払仮処分申請事件
いわゆる事件名 岐阜交通事件
争点
事案概要  タクシーの運転手らが、ビラ配布等を理由に、懲戒解雇、通常解雇の意思表示をうけたので、労働契約上の地位保全、賃金仮払の仮処分を申請した事例。(申請一部認容)
参照法条 民法536条2項
労働基準法26条,89条1項9号
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / バックペイと中間収入の控除
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 政治活動
裁判年月日 1973年3月26日
裁判所名 岐阜地
裁判形式 判決
事件番号 昭和46年 (ヨ) 179 
裁判結果 一部認容
出典 労働判例180号56頁
審級関係
評釈論文
判決理由  申請人らが会社の労務の受領拒否により給付を免がれた労働力をいずれもA株式会社に転用して得た収入は、申請人らが労務提供債務を免がれたことと相当因果関係にあるから、会社は申請人らに右収入の償還を請求できるとするのが相当であり、申請人らが受くべき反対給付たる各賃金総額からこれらを控除できるものと解する。ところで、考えるに、休業手当を規定した労働基準法第二六条は、使用者に労働者の労務の履行を要せずして反対給付(賃金支払)の責任を認め、違反行為に対する罰則規定を設けてその履行を強制し、休業期間中の労働者の最低生活の保障を意図した規定であるが、ここに「休業」とは個々の労働者の労務の履行不能を含み、「手当」が賃金の一種であることを考えると、当該規定は、労働者が民法第五三六条第二項の「使用者の責に帰すべき事由」によって解雇された場合にもその適用があるというべきであり、右趣旨を参酌すると、右控除額の限定はいずれも申請人らの平均賃金の四割を超えることが許されず、前記認定の平均賃金の一〇〇分の六〇をもってその控除残額の限度とするのを相当とする。そうであれば、たとい会社に対する未就労期間中に他に就労して得た収入がある場合であっても、右超過部分を控除するのは相当でない。むしろかかる超過部分が出ても、本件のごとき本来の未就労期間が相当長期にわたる場合は、他への就労の機会がいつから生じたか、就労しなかった期間の損失の累計がいかほどにまで達したかを総合的に判断して、些少の超過はこれを論じない、とするのが当を得ていると解される。