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ID番号 00918
事件名 従業員地位確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 清心会山本病院事件
争点
事案概要  ユニオンショップ協定に基づき労働組合を除名された従業員を解雇したことにつき、右除名は無効であるとして、従業員としての地位の保全等を求めた事例。
参照法条 民法536条2項
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / ユニオンショップ協定による解雇と賃金請求権
裁判年月日 1980年7月17日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和53年 (ネ) 684 
裁判結果 棄却
出典 労働民例集31巻4号823頁/時報984号126頁/労働判例348号26頁
審級関係 一審/03342/大阪地/昭53. 3.20/昭和48年(ワ)1735号
評釈論文
判決理由  使用者がユニオン・ショップ協定に基づき、労働者が労働組合から除名されたことを唯一の理由として解雇して労務の受領を拒否したが、右除名が無効であったため、使用者にも右協約上の解雇義務が生ぜず、ために右解雇が解雇権の濫用として無効とされる本件の場合には、右解雇労働者(被控訴人ら)は使用者(控訴人)に対する賃金請求権を失わないものと解すべきである。けだし、使用者は労働組合のする除名処分について審査権を有せず、又、除名が常に有効である保証はないけれども、解雇権を行使して労務の受領を拒否すること自体は、使用者が自らユニオン・ショップ協定を締結したことに基づき、使用者の責任においてなされたものであるから、たとえ労働組合に対する関係においては、協約上の義務履行としてなされたものであっても、解雇労働者との関係においては、右解雇が無効であるのに、これを有効としてした労務の受領拒否による労働者の不就労は、これを使用者の責任領域にその原因があるものとして使用者の責に帰すべき事由(民法五三六条二項)に因るものと解すべきだからである。
 この場合、解雇労働者がユニオン・ショップ協定締結当事者である労働組合の組合員である事実は、使用者が右協定に基づき労働組合に対して解雇義務を負うところから生ずる使用者・労働組合間の法律関係と、使用者・労働者間の雇傭契約上の法律関係とが別個の法律関係であることに影響を及ぼすものではない。又、除名処分が無効であれば、使用者に解雇義務が生ぜず、これを理由とする解雇も無効とされるものであるからには、ユニオン・ショップ協定に基づく解雇には、自己の責任によらずしてそれが無効となる危険が常に存在するといい得るのであって、自己の自由意思でかかる危険のある協約を締結した使用者は、そのような協約に基づく解雇であることを免責の事由として援用し得ないものというべきである。(使用者は、解雇労働者の不就労による損害につき、これを労働組合に対し求償する権利を取得し得る。)