ID番号 | : | 00939 |
事件名 | : | 賃金請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | ノースウエスト航空事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 被控訴人会社がその業務の一部を下請化したことに端を発するストライキにより控訴人らの就労が不要になったとして休業を命じ賃金等を支払わなかったため、主位的に賃金の支払が、予備的に休業手当の支払が請求された事例。(一審 棄却、二審 主位的請求棄却、予備的請求認容) |
参照法条 | : | 労働基準法26条 民法536条2項 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 休業手当 / 休業手当の意義 賃金(民事) / 休業手当 / 部分スト・一部ストと休業手当 |
裁判年月日 | : | 1982年7月19日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和55年 (ネ) 472 |
裁判結果 | : | 主位的請求控訴棄却 予備的請求判決取消(上告) |
出典 | : | 労働民例集33巻4号673頁/時報1051号149頁/タイムズ483号130頁/労働判例390号36頁/労経速報1136号27頁 |
審級関係 | : | 上告審/03074/最高二小/昭62. 7.17/昭和57年(オ)1189号 |
評釈論文 | : | 菊池高志・労働判例392号4頁/荒木尚志・ジュリスト798号124頁/菅野和夫・季刊実務民事法1号270頁 |
判決理由 | : | 「労働基準法第二六条は「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」と規定しており、右規定は、使用者はその責に帰すべき事由の有無にかかわらず労働者に休業を命ずることができ、右休業が使用者の責に帰すべき事由による場合は使用者は労働者に対し所定の休業手当を支払うべき公法上並びに私法上の業務を負い、しからざる場合においては右の義務を負わないことを意味することは明らかであって、しかも法が、使用者が労働者に対し賃金を支払うべき義務を負う場合、これと重畳して休業手当支払義務をも負うべきことを定めたと解することは困難であるから、同条の解釈としては使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は休業期間中当該労働者に対し、賃金の支払いにかえて、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払うべきことを定めたものというべきである(このように解するときは、最低六〇パーセントの休業手当を支払うことさえ覚悟すれば、使用者は好きなときに労働者に休業を命ずることができることとなり、労働者に著しく不利であるから、使用者の恣意的な休業に対しては休業手当債権のほかに、これと並んで賃金債権の成立の余地をも認め、両者が競合する場合には、いずれを行使するかは労働者の選択に委すべきであるとの見解もあると思われるが、使用者は常に絶対的強者である訳ではなく、休業手当を払って労働者に休業を命ずることは、通常使用者にとって著しい不利益となるのであり、賃金と休業手当の差額の支払を免れるために、使用者が安易に休業を命ずるという事態の可能性は決して大きくはないと考えられるから、前記の解釈は、労働者に対して特に苛酷なものであるということはできない。)。それ故本件において被控訴人が控訴人らに対し休業を命じ、かつその結果控訴人らが就労しなかった事実がある以上、使用者である被控訴人の責に帰すべき事由の有無に従い、休業手当請求権の有無の問題があるのはともかくとして、賃金請求権の存否はもはや問題とならないことは、既に述べたところから明らかであって、控訴人らの本件賃金請求は主張自体失当であるといわざるをえない。 |