ID番号 | : | 00965 |
事件名 | : | 退職金請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 退職金請求事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 在職中判明しておれば直ちに懲戒解雇される程重大な背信行為をしていたとして形式上円満退職にもかかわらず退職金の支払を拒絶された原告がその支払を求めた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法24条,89条1項3号の2 民法624条 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金の範囲 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / 全額払・相殺 賃金(民事) / 退職金 / 退職金の法的性質 |
裁判年月日 | : | 1965年7月7日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和39年 (ワ) 1855 |
裁判結果 | : | |
出典 | : | タイムズ181号185頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金―賃金の範囲、退職金―退職金の法的性質〕 被告は「原告は在職中判明しておれば直ちに懲戒解雇される程重大な背信行為をしていたものであるから、形式上円満退職の形で退職したとしても退職金請求権はない」旨主張するが、就業規則等で支給条件が明確に規定されている退職金請求権は賃金の一種であって、一般に退職と同時に具体的に発生し、支払時期について特則のない以上労働者の請求によって履行期の到来する債権であり、客観的に懲戒解雇に値するような背信行為の存在しないことを条件とし或は使用者の支給の意思表示のあることを要件として成立する権利でないと解せられ、なお本件において懲戒解雇の措置の採られていないことは被告の自認するところであるから、被告の主張は理由がない。 〔賃金―賃金の支払い原則―全額払〕 また被告は「仮に原告に退職金請求権があるとしても懲戒解雇に値するような重大な背信行為があり被告に重大な損害を与えた以上本件の請求は権利の乱用である」旨主張するが、仮にその主張のような背信行為があったとしても、被告が別途にその損害の補填を求める途が閉ざされているわけではなく、本件の金員請求に直ちに応ずることによって償い難い損害を蒙るものとも認め難いところであって、双方の法益の比較衡量上のみからみても未だ権利乱用と認めるに足らないのみならず、仮に被告の主張するような抗弁を以て原告の請求を阻止することができるものとすれば、賃金債権と不法行為に基く損害賠償債権との相殺を禁止した労働基準法第二四条の趣旨が実質的に没却される結果を来すものと謂うべきであって、この見地よりしても被告の主張は採用し難いところである。 |