ID番号 | : | 00972 |
事件名 | : | 退職金請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 電電公社事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 国家公務員等退職手当法に基づき発生した退職金債権の譲受人が、支給義務者たる電電公社に対し退職金の支払を求めた事例。(上告棄却、譲受人敗訴) |
参照法条 | : | 労働基準法24条1項 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金の範囲 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / 直接払・口座振込・賃金債権の譲渡 |
裁判年月日 | : | 1968年3月12日 |
裁判所名 | : | 最高三小 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和40年 (オ) 527 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 民集22巻3号562頁/時報511号23頁/タイムズ221号135頁/金融法務506号31頁/訟務月報14巻4号361頁/金融商事100号2頁/裁判集民90号635頁 |
審級関係 | : | 控訴審/01135/東京高/昭40. 2.25/昭和39年(ネ)598号 |
評釈論文 | : | 阿久沢亀夫・法学研究〔慶応大学〕41巻7号110頁/花見忠・色川,石川編・最高裁労働判例批評〔2〕民事編406頁/吉井直昭・ジュリスト404号70頁/吉井直昭・法曹時報20巻8号171頁/窪田隼人・民商法雑誌59巻4号658頁/慶谷淑夫・判例タイムズ224号61頁/香川孝三・労働判例百選<第三版>〔別冊ジュリスト45号〕102頁/青木康・地方財務171号183頁/石川正・法学協会雑誌86巻5号600頁 |
判決理由 | : | 〔賃金―賃金の範囲〕 国家公務員等退職手当法(以下「退職手当法」という。)に基づき支給される一般の退職手当は、同法所定の国家公務員または公社の職員(以下「国家公務員等」という。)が退職した場合に、その勤続を報償する趣旨で支給されるものであって、必ずしもその経済的性格が給与の後払の趣旨のみを有するものではないと解されるが、退職者に対してこれを支給するかどうか、また、その支給額その他の支給条件はすべて法定されていて国または公社に裁量の余地がなく、退職した国家公務員等に同法八条に定める欠格事由のないかぎり、法定の基準に従って一律に支給しなければならない性質のものであるから、その法律上の性質は労働基準法一一条にいう「労働の対償」としての賃金に該当し、したがって、退職者に対する支払については、その性格の許すかぎり、同法二四条一項本文の規定が適用ないし準用されるものと解するのが相当である。 〔賃金―賃金の支払い原則―直接払・口座振込・賃金債権の譲渡〕 ところで、退職手当法による退職手当の給付を受ける権利については、その譲渡を禁止する規定がないから、退職者またはその予定者が右退職手当の給付を受ける権利を他に譲渡した場合に譲渡自体を無効と解すべき根拠はないけれども、同法二四条一項が「賃金は直接労働者に支払わなければならない。」旨を定めて、使用者たる賃金支払義務者に対し罰則をもってその履行を強制している趣旨に徴すれば、労働者が賃金の支払を受ける前に賃金債権を他に譲渡した場合においても、その支払についてはなお同条が適用され、使用者は直接労働者に対し賃金を支払わなければならず、したがって、右賃金債権の譲受人は自ら使用者に対してその支払を求めることは許されないものと解するのが相当である。そして、退職手当法による退職手当もまた右にいう賃金に該当し、右の直接払の原則の適用があると解する以上、退職手当の支給前にその受給権が他に適法に譲渡された場合においても、国または公社はなお退職者に直接これを支払わなければならず、したがって、その譲受人から国または公社に対しその支払を求めることは許されないといわなければならない。したがって、本件退職手当金の支払については、労働基準法二四条一項本文の規定が適用される結果、上告人において、訴外Aの被上告人に対する退職手当の受給権を譲り受けたとしても、被上告人に対し直接その支払を求めることは許されないとした原審の判断は、結論において正当である。 |