全 情 報

ID番号 00973
事件名 給料等請求事件
いわゆる事件名 バー白菊事件
争点
事案概要   生計を一にする妻から退職金債権と未払賃金債権を譲り受けた夫が、その支払を妻の使用者に求めた事例。(請求認容)
参照法条 労働基準法24条1項
体系項目 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / 直接払・口座振込・賃金債権の譲渡
裁判年月日 1968年4月4日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和43年 (ワ) 943 
裁判結果 認容
出典 労働民例集19巻2号517頁/時報517号82頁/タイムズ221号171頁/金融商事107号14頁
審級関係
評釈論文 香川孝三・ジュリスト435号136頁/木村慎一・判例評論117号139頁
判決理由  労働基準法二四条によれば使用者は賃金を支払うのに直接労働者に対してしなければならないから、たとえ労働者が第三者に賃金債権を譲渡し使用者の承諾を得ても、使用者は賃金を右第三者に対してでなく、労働者に対して直接弁済しなければならない。しかし同条の目的とするところは、高利貸、職業紹介者らが賃金債権の譲渡又は代理受領の形式をとって労働者の賃金を受領し、もって暴利をむさぼり労働者を搾取した経験にかんがみ、ともかくもこれを防止し労働者の生活を安定させるべく、労働者に直接賃金を支払うことを罰則の制裁付で使用者に強制するにある。
 (中 略)
 してみると、妻が夫に対し賃金債権を譲渡し、使用者がこれに応じて夫に賃金を支払っても、夫婦が生計を一にしないとの特別の事情でも顕れない限り夫に支払われた妻の賃金は結局妻の自由な使用にも委ねられたことに帰するから、かゝる場合は同条の禁止に触れないと解すべきである。
 従って右のような特別の事情のない本件では、被告は右債権譲渡により結局原告とAとの退職金及び賃金債務合計三一万五〇〇〇円を原告に弁済する義務を負うに至ったというべきである。