全 情 報

ID番号 00982
事件名 退職金等請求事件
いわゆる事件名 日之出タクシー事件
争点
事案概要  タクシー会社の従業員が一年八ケ月私事欠勤した後退職したが、退職金の支払にあたって健康保険料、地方税等を控除されたので、右控除額等の支払を請求した事例。(請求一部認容)
参照法条 労働基準法24条1項
体系項目 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / 全額払・相殺
賃金(民事) / 賞与・ボーナス・一時金 / 賞与請求権
裁判年月日 1974年11月28日
裁判所名 福岡地小倉支
裁判形式 判決
事件番号 昭和48年 (ワ) 737 
裁判結果 一部認容 一部棄却(確定)
出典 時報771号89頁/タイムズ328号335頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔賃金―賃金の支払い原則―全額払〕
 原告は右タクシー使用料等は労基法により退職金から控除できない旨主張するので、考えるに、同法二四条一項によると、賃金はその全額を支払わなければならないが、法令に別段の定がある場合若しくは当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合との書面による協定がある場合においては賃金の一部を控除して支払うことができるものとされるところ、《証拠略》によると、被告会社とその労働者の過半数で組織する労働組合との間には、公租公課、会社に対する負債金の返済、および従業員が個人の責任において会社のタクシーを使用した場合の未払運賃等については当該従業員の賃金からこれを控除することに同意する旨の書面による協定があることが認められ(る)。《証拠判断略》。そうすると賃金の一種である退職金から右タクシー使用料等を控除することは当然許されるものであって何ら労基法に反するものではないから、この点の原告の主張は失当である。
 〔賃金―賞与・ボーナス・一時金―賞与請求権〕
 凡そ賞与金は、定期または臨時に原則として労働者の勤務成績に応じてその労働の対価として支給されるものであって、支給額が予め確定されていないものをいうのであるから、その性質上勤務を前提条件とするものであるとともに、労使間の協定による支給額の確定によってその請求権が発生するものと解すべきところ、原告は昭和四六年一〇月八日から同四八年五月二五日まで欠勤したのみならず《証拠略》によると、原告は昭和四六年冬、同四七年夏および冬の労使間の賞与一時金に関する協定で、その受給資格対象者から除外されていたことが認められ、これに反する《証拠略》は信用できず、他に右認定を覆すに足りる証拠はなく、他に原告に賞与を支給する旨の格別の協定の存在を認めるに足りる証拠もない。よって原告の賞与の請求も理由がない。