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ID番号 00986
事件名 組合費支払請求控訴事件
いわゆる事件名 ゼネラル石油精製事件
争点
事案概要  ビラ貼り等の組合の不法行為に基づく損害賠償請求権(自働債権)とチェックオフ協定に基づく控除組合費一括交付請求権(受働債権)の相殺の効力がわれた事例。(一審 請求認容、二審 控訴棄却、請求認容)
参照法条 民法505条
労働基準法24条1項
体系項目 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / チェックオフ
裁判年月日 1977年10月27日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和50年 (ネ) 2653 
裁判結果 棄却
出典 労働民例集28巻5・6合併号454頁/時報873号103頁/東高民時報28巻10号277頁/労経速報973号6頁/労働判例292号54頁
審級関係 一審/横浜地川崎支/昭50.11.17/昭和47年(ワ)296号
評釈論文 西村健一郎・季刊労働法111号111頁
判決理由  相殺の許否
 控訴会社が相殺に供しようとする自働債権は、控訴会社の被控訴組合に対する不法行為に基づく損害賠償債権であるところ、その受働債権は、前示説示のようにチェックオフ協定に基づき被控訴組合が控訴会社に対して賃金から控除した組合費相当額の交付請求権であるが、その請求権は被控訴組合の組合員たる従業員が有する賃金請求権の一部であり、かつこれが自己の所属する組合に組合費として現実に納付されるようにその受領の代理権を被控訴組合に与えたものであって、現実に履行されることを要し、相殺等それ以外の履行方法によっても差し支えないことにつき何らの特約の存在を認むべき証拠がない以上、右協定の解釈上相殺を認めない趣旨と解すべきであり、したがって当事者が相殺につき反対の意思を表示した場合(民法五〇五条二項本文)に該当し、控訴人の主張する債権をもって被控訴人が本訴において請求する債権と相殺することはできない。
 (中 略)
 賃金から組合費相当額の控除は前示のチェックオフ協定によっているもののこれが賃金から控除されるのは前示説示のように従業員においてその控除額が組合費として納入される範囲で承認していたものであるから、控訴会社において右組合費相当額を組合に現実に交付せず、したがって組合費納入の効果が生じない以上、控訴会社としては従業員との間において右相当額の賃金が支払われなかったこととなるのであるから、この点に関する控訴人の主張は理由がない。
 (中 略)
 前示説示のように右協定に基づき組合費相当額を賃金から控除し被控訴組合に引き渡す趣旨は組合員たる従業員においてこれが組合費として納付される限りにおいて控除を承認しているものであるから、従業員と会社との間において特に会社が組合費相当額を控除したことにより組合費納入の効果を発生させ、その控除額の引渡しが通常の金銭債務とする旨の合意の存しない以上、右協定からは組合費相当額の控除により直ちに組合費納入の効果が生ずるものとは解せられないし、また控除額が現実に組合に引き渡されて会社の賃金全額支払義務が履行されたものというべきであるから、この点に関する控訴人の主張は理由がない。
 (中 略)
 以上、控訴人の相殺の抗弁に関する主張はすべて理由がなく、その主張の自働債権の存否につき判断するまでもなく控訴人の相殺の抗弁は理由がない。