ID番号 | : | 00989 |
事件名 | : | 退職金等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | ジェフ事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 不正融資を行い九四七万円の未回収金を発生させたため解雇されたサラ金会社の従業員が、会社によって損害の賠償にあてるとして解雇前三回分のボーナスと解雇予告手当の支払われなかったことが労働基準法二四条一項に反するとして右各金員の支払等求めた事例。(請求認容) |
参照法条 | : | 労働基準法24条1項 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / 全額払・相殺 |
裁判年月日 | : | 1984年6月26日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和58年 (ワ) 2117 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | タイムズ545号227頁/労経速報1193号22頁/労働判例434号38頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | そこで、右のように賃金を損害賠償債務の弁済に充てる趣旨で使用者に預けることが労働基準法二四条一項に定める賃金全額払の原則に違反しないか否かが問題となる。右規定は、労働者の賃金が労働者の生活を支える重要な財源であることから、使用者が一方的に賃金を控除することを禁止し、もって労働者に賃金の全額を確実に受領させ、労働者の経済生活をおびやかすことのないようにしてその保護をはかろうとする趣旨である。このような賃金全額払の規定の趣旨から考えると、労働者が使用者(又は使用者と密接な関係にある第三者)に対する損害賠償債務の弁済に充てる趣旨で賃金の全部又は一部の支払を受けないことは、それが使用者の一方的な意思によるときは、労働者の賃金債権に対して、使用者が労働者に対して有する債権をもって相殺することと同様の結果となり、許されないことはいうまでもないけれども、労働者が自由な意思に基づいて使用者との間にその旨の合意(相殺の合意に類似した合意)をした場合にまでこれを許されないと解することは相当でない。ただ、使用者と労働者との契約関係の特質からみて、賃金債権に関する相殺の合意は労働者が使用者によって強制されて余儀なく締結することとなる危険が大きいから、右の合意が有効であるというためには、右の合意が労働者の自由な意思に基づくものであると認めるに足りる合理的な理由が存在しなければならないものと解するのが相当である。 右に認定した事実によると、(中 略)。 ボーナス及び解雇予告手当金を被告会社に預けることを承諾したことが、原告の自由な意思に基づくものであると認めるに足りる合理的な理由が存在したものと認めることはできず、結局原告が自由な意思によりボーナス及び解雇予告手当金を損害賠償債務の弁済に充当することを承諾したものとすることはできない。 そうすると、被告会社が前記のボーナス及び解雇予告手当金を損害賠償債務の弁済のために預ったことは、賃金の全額払の原則を定めた労働基準法二四条一項の規定に違反するから、被告会社は原告に対し、前記のボーナス及び解雇予告手当金を支払うべき義務があるといわなければならない。 |