全 情 報

ID番号 00990
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 あべ亭事件
争点
事案概要  原告らが退職後被告に対し未払賃金の支払を求めたのに対し、被告が原告らと共同生活していた際に立替払していた生活雑費について被告が原告らに対して有する債権による相殺を主張した事例(認容)。
参照法条 労働基準法24条1項
体系項目 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / 全額払・相殺
裁判年月日 1985年4月3日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和58年 (ワ) 10212 
裁判結果 認容
出典 労経速報1223号13頁
審級関係
評釈論文
判決理由  三 被告は、このほか、家賃や生活雑費の原告ら分担金を立て替えているとして、相殺を主張する。しかし、労働基準法二四条一項は「賃金は……その全額を支払わなければならない」と規定し、これは、労働者の賃金債権に対しては使用者が労働者に対して有する債権をもって相殺することを許さないとの趣旨を包含するものと解されるから、被告の主張は失当である。
 また、被告は、原告らに支払われるべき賃金からの所得税の控除を主張する。しかし、所得税の源泉徴収は、使用者が労働者に対し賃金を現実に支払う際に行うべきものであり(所得税法一八三条一項)、賃金債権を確定してその支払を命じる際にその額を予め差し引くべきものではないから、この主張も失当である。