ID番号 | : | 00996 |
事件名 | : | 賃金支払仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 日本自動車事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | ロックアウト中の賃金支払の仮処分申請につき、賃金請求権は発生しないとして却下した事例。 |
参照法条 | : | 民法413条,536条2項 労働基準法24条 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / ロックアウトと賃金請求権 |
裁判年月日 | : | 1954年8月10日 |
裁判所名 | : | 横浜地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和28年 (ヨ) 664 |
裁判結果 | : | |
出典 | : | 労働民例集5巻4号408頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 元来工場閉鎖(作業所閉鎖)は、労働者に争議権が認められているのに対応して、使用者に認められた争議行為であって、企業または事業の存立ないし工場施設等の安全を危殆ならしめ使用者に著しい損害を及ぼすべき労働者の争議行為が現存し、あるいは右のごとき争議行為の危険が明白である場合その他緊急已むを得ない事由の存する場合にはじめて許されるものであるから、使用者はもとよりこれを濫用することを許されぬところであり、したがって使用者が何らの利益ないし必要も存しないにもかかわらずこれを行ったりなどするごとく社会観念上容認し得ないような事情の存するときには、その工場閉鎖は違法であるといわねばならない。ところで、本件についてみるに、叙上認定のごとく組合は五月十九日以後においてはしばしば具体的な争議行為を行い、六月十一日以後ストライキに突入しているが、殊に七月二十日以降組合が会社の禁止命令を無視して操業の一部を開始し、かつほしいままに会社の材料倉庫の施錠を外して部品等を搬出し始めた後にあってはすでに適法な争議権行使の限界を超え違法性を帯びるにいたったものと認められる。しこうして、会社が八月五日になした本件工場閉鎖はまさに右のごとき違法な争議行為に対抗し、事業の存立および工場施設等の安全を図り、かつ会社の蒙るべき著しい損害を避けるため、やむを得ずしてなされた措置であると解せられそのほかに争議権の濫用と認むべき点はないから、右閉鎖は会社の正当な争議行為というべきである。 |