ID番号 | : | 01002 |
事件名 | : | 未払賃金請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 明治生命事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 月掛生命保険の外務職員である上告人がストライキを行ったため被上告人会社が給与のうち「勤務手当」等をいわゆる固定給として削減したことに対し、上告人がその支払を求めた事例。(請求を棄却した原判決を審理不尽として破棄差戻) |
参照法条 | : | 労働基準法24条1項 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 争議行為・組合活動と賃金請求権 |
裁判年月日 | : | 1965年2月5日 |
裁判所名 | : | 最高二小 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和37年 (オ) 1452 |
裁判結果 | : | 破棄差戻 |
出典 | : | 民集19巻1号52頁/時報399号51頁/裁判集民77号239頁 |
審級関係 | : | 控訴審/00998/東京高/昭37. 9.26/昭和35年(ネ)1662号 |
評釈論文 | : | 阿久沢亀夫・季刊労働法57号83頁/窪田隼人・民商法雑誌53巻3号446頁/高藤昭・労働経済旬報630号11頁/石川吉右衛門・法学協会雑誌82巻5号692頁/朝川伸夫・法学新報74巻9・10合併号1頁/渡部吉隆・法曹時報17巻4号119頁/萩沢清彦・新版労働判例百選〔別冊ジュリスト13号〕194頁/片岡昇・法学論叢77巻5号1頁/片岡昇・労働法学研究会報633号1頁 |
判決理由 | : | ストライキによって削減し得る意義における固定給とは、労働協約等に別段の定めがある場合等のほかは、拘束された勤務時間に応じて支払われる賃金としての性格を有するものであることを必要とし、単に支給金額が相当期間固定しているというだけでは足らず、また、もとより勤務した時間の長短にかかわらず完成された仕事の量に比例して支払わるべきものであってはならないと解するのが相当である。 ところで、前記原審の確定した限りの事実関係の下においては、 所論諸項目の給与のうち、勤務手当および交通費補助は、労働の対価として支給されるものではなくして、職員に対する生活補助費の性質を有することが明らかであるから、これら項目の給与は、職員が勤務に服さなかったからといってその割合に応ずる金額を当然には削減し得るものでないと認むべきである。次に、給料、出勤手当、功労加俸および地区主任手当についていえば、被上告人会社における勤務時間拘束の制度は、主として業務管理の手段として設けられたものであって、そこに右各項目の給与の額を決定する絶対的基準としての意味は見いだし難く、従ってまた、これが設けられたことに対応して固定的給与を加味した給与体系が採られるにいたったということも、この種職員の所得の安定を図る趣旨に出たものというべきであり、しかも、右係長、係長補、主任等の資格が純然たる給与の級別に過ぎず、且つ、該資格の決定がその者の過去における仕事の成績によって行なわれる以上、給与の額は、主として、仕事の成果によって決定されるものであって、それが一定の資格にとどまる間その期間中における募集、集金の成果と関係なく支給されるのは、過去において完成された仕事の量に対して支払わるべき報酬を給与の平均化を図る目的で右期間に分割して支給されるというほどの意味を有するに過ぎないものと認めるのが当然であり、また、右期間中の仕事の成果が次期の給与額に直接自動的に影響を及ぼすことも否定し得ないところである。それ故、右各項目の給与は、上告人らが勤務に服した時間の長短を基準として決定された面が全然ないとはいえないにしても、その実質は、むしろ、本件ストライキの行なわれた昭和三二年六月以前における上告人らの募集、集金の成果に比例して決定されたものであって、純然たる能率給であるかどうかは格別、少なくとも、前記意義における固定給ではない、と認むべきである。もっとも、典型的な固定給の受給者と目されている一般労働者にあっても、日常の仕事の成績を考慮してその者の昇格、格下げが決定され、これに伴ない給与の増減が招来されることは疑いを容れないところであるが、この場合には、仕事の量によって決定さるべき資格が給与そのものの級別ではなくして職務の内容に関するものであることを看過してはならないのであって、単に仕事の成績が給与の額に影響を及ぼすの一事をもって、右両者の間に存する給与決定上の本質的相違を無視することは許されないものといわなければならない。 |