ID番号 | : | 01009 |
事件名 | : | 賃金支払請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 旭カーボン事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 夏期一時金要求貫徹のために行ったストライキによる不就労を理由に賃金をカットされた従業員らが、右賃金カットの対象とされた賃金中、家族、住宅、勤続の各手当等は生活補助費としての性格を有しカットの対象とはしえないとしてカットされたこれら各手当の支払を求めた事例。(家族、住宅、勤続の各手当の支払についてのみ認容) |
参照法条 | : | 労働基準法24条1項 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 争議行為・組合活動と賃金請求権 |
裁判年月日 | : | 1971年3月31日 |
裁判所名 | : | 新潟地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和43年 (ワ) 603 |
裁判結果 | : | |
出典 | : | 労働民例集22巻2号409頁/時報629号94頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 渡辺章・労働法の判例〔ジュリスト増刊〕65頁 |
判決理由 | : | 争議行為と賃金の関係についてはいろいろと議論の多いところであるが、一般には賃金を従業員たる地位の保持に対し保障的に支払われる部分と、日々の労務提供に対し交換的に支払われる部分とに大別し、(中略)。 いわゆるノーワーク・ノーペイの原則によりカットし得るのは右交換的部分に属する賃金のみで、保障的部分に属する賃金は争議行為中といえども従業員たる地位が保持されていることに変わりはないから、その間の労務不提供を理由にカットすることはできないと解されている。 当裁判所も基本的には右と同旨の見解に立ち本件賃金カットの適否について検討を進めるが、賃金は労使の交渉に基づく労働協約等によってその内容が具体的に定められているものであるから、先ず本件賃金カットの対象とされた諸手当につき協約上どのような定めがなされているかをみると、(中 略)。 家族手当(協約第五七条)と住宅手当(同第六四条)はいずれも原告主張のとおり所定の資格条件があれば日々の労務提供の有無に係りなく毎月定額が支給されるもので、欠勤控除についての条項もない。 してみると右手当はいずれも従業員たる地位に基づく保障的部分に属する賃金であると認められ、ストライキによる労務不提供を理由にカットするのは違法ということになる。 (中 略) 右のとおり協約および規則の定めによれば基本給と勤続手当とは同一性質同一扱いの賃金であると認められないばかりか、右手当に欠勤条項が付されていないことを考えあわせれば、(中 略)。 勤続手当は従業員中の所定年数勤続者に対しその労働の質や日々の提供に係りなく毎月の定額支給を定めた保障的部分に属する賃金で、その趣旨は従業員に対し永年勤続を奨励し且つ生活給体系における年功序列を維持するためのものと解すべきである。 従ってストライキによる労務不提供を理由に右手当をカットするのは違法である。 (中 略) 右によれば精勤手当は従業員が単にその地位にあることによって支給されるものではなく、一カ月のうち所定の就労日に三回以上欠勤することなく出勤し労務提供をすることを条件に始めて発生する賃金で、交換的部分に属するものとみるべきである。 |