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ID番号 01023
事件名 賃金請求控訴事件
いわゆる事件名 日本原子力研究所事件
争点
事案概要  動力試験炉(JPDR)の五班三交替勤務を四班三交替勤務に改める業務命令を出し、これに反対して部分ストを実施した労組にロックアウトで対抗し、スト解除後も二一日間にわたってロックアウトを継続して組合員の賃金カットを行った会社に対し、カット分の賃金の支払が求められた事例。(一審 請求認容、二審 控訴棄却、請求認容)
参照法条 民法536条2項
労働基準法24条1項
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / ロックアウトと賃金請求権
裁判年月日 1977年11月29日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和47年 (行コ) 68 
裁判結果 棄却
出典 労働民例集28巻5・6合併号511頁/東高民時報28巻11号309頁/労働判例289号43頁
審級関係
評釈論文
判決理由  1 当裁判所も控訴人引用の最高裁判所の判決の趣旨に従い、使用者の争議行為の一態様たるロック・アウトが正当なものとして是認されるかどうかは、個々の具体的な労働争議における労使間の交渉態度、経過、組合側の争議行為の態様、それによって使用者側の受ける打撃の程度等に関する具体的諸事情に照らし、当該ロック・アウトが、労働者側の争議行為により使用者側において著しく不利な圧力を受けることになるような場合に行われたものであって、衡平の見地から見て労使間の勢力の均衡を回復するための対抗防衛手段として相当なものであると認めることができるかどうかによってこれを決すべきものと解するものである(なお、右にいう「労働者側の争議行為により使用者側において著しく不利な圧力を受けることになる場合」が、「企業の目的の達成が阻止された場合」その他控訴人の挙げる諸場合に限定されるものと解すべきでないことも控訴人の主張するとおりである。)したがって、本件ロック・アウトの正当性の判断は、本件労働争議における右に掲げたような具体的諸事情について検討した上でなされなければならない。
 (中 略)
 5 以上の次第であって、これを要するに、控訴人が昭和四二年一二月二七日に発した本件業務命令は、JPDRの直勤務につき四班三交替制を定めるものであって、右直勤務を五班三交替制によるべきものと定めた控訴人とA労組間の昭和三八年七月二一日付及び同年八月一五日付協定に反するものであると同時に、右直勤務者の従前の労働条件を切り下げるものであった(以上のことは昭和四三年一月七日以降現実に実施された直勤務態様についても同様である。)のであり、昭和四二年一一月二〇日の控訴人の改正案提示から本件業務命令を経て本件ロック・アウトに至る間の労使間の交渉経過において、A労組側の態度のみを一方的に非難することのできないことも明らかである。そして、本件ストライキは、右業務命令の撤回を目的として行われたものであってその目的において不当なものがあったといえないのみならず、その態様の面においても不公正なものであったということはできないのであり、これによって控訴人が受ける損失、打撃の程度についてみても、試験研究等の業務の阻害、ストライキに参加しなかったJPDR部各課等の組合員への賃金支払、売電収入の杜絶等控訴人主張のいずれの面においてもさほど大きなものがあるとは認め難く、控訴人が本件ストライキにより著しく不利な圧力を受けることになるような状況におかれていたとは認められないというべきである。結局、本件ロック・アウトは、控訴人として右損失、打撃を避けるという目的のあったことは否定できないにしても、同時に本件ストライキを排除して、ロック・アウトの圧力によりA労組をして本件業務命令の定める四班三交替制を内容とする労働協約を締結させるという積極的な意図の下に行われたものであるとみざるをえない。以上を前記1において述べた法理に照らして考えれば、本件ロック・アウトは、その開始の時点において、「本件ストライキにより控訴人が著しく不利な圧力を受けることになるような場合に行われたもので、衡平の見地から見て労使間の勢力の均衡を回復するための対抗防衛手段として相当なものであった」とは認められないというほかない。そして本件ロック・アウトが開始された後の時点において、これを正当ならしめるような特段の事情の変化があったことは本件全証拠によるもこれを認めることができないから、右の結論は本件ロック・アウト継続中についても異ならないというべきである。よって、本件ロック・アウトはその実施期間中のいずれの時点をとっても正当性を認め難いといわなければならず、控訴人の主張は採用することができない。
 三 してみると、控訴人は被控訴人らに対し、本件ロック・アウトにより就労できなかった期間中の同人らの賃金の支払義務を免れない。