全 情 報

ID番号 01051
事件名 未払一時金請求事件
いわゆる事件名 ニプロ医工事件
争点
事案概要  賞与の算定基礎となる期間は在籍し就労していたが支給日前に退職した原告らが、賞与は支給日に在籍する者にのみ支給するとの慣行があるとしてその支給を受けなかったため、その支払を請求した事例。(棄却)
参照法条 労働基準法2章,24条
民法624条
体系項目 賃金(民事) / 賞与・ボーナス・一時金 / 支給日在籍制度
裁判年月日 1982年9月8日
裁判所名 前橋地太田支
裁判形式 判決
事件番号 昭和56年 (ワ) 69 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1132号22頁
審級関係
評釈論文 近藤昭雄・労働判例399号4頁/近藤昭雄・労働判例400号8頁
判決理由  被告会社は予てから、賞与はその支給日に在籍する従業員にのみ支給する扱いをしており、従業員らもこれを納得し特に反対の意思を示したことはないとの事実を認めるに十分である(《人証略》のみではこれを妨げるに足りず、《証拠略》も《人証略》を参酌するとみぎ認定に反するとはいえない。)。したがって、賞与受給者に関する右の扱いは、被告会社労使間の慣行として、つとに確立しているとみるのが相当である。ところで、被告会社が受給者をこのように絞っているのは、賞与を既になされた労働の対価として捉えるほかに、向後の勤務継続への期待も含ませているものと忖度できるが、私企業がその支給する賞与にかかる期待を込めることはあながち不合理とも考えられないので、受給者に関する前記の慣行は、改善の余地はあるにせよ、公序良俗に反するとまではとうてい言えないと当裁判所は考える。それゆえ、本件賞与につき原告らが適用を受けるべき労働協約がなく、また労働契約・就業規則にも賞与受給資格に関する格別の定めのあることが窺われない本件においては、受給資格については原告らも前記慣行の規律をまぬかれないと解するの他はない。
 そうすると、本件賞与が支給された昭和五五年九月一三日にはすべての原告が被告会社に在籍していなかったことを原告らが自認する以上、本件請求は全部認容するに由なきものである。