全 情 報

ID番号 01058
事件名 未払一時金請求控訴事件
いわゆる事件名 ニプロ医工事件
争点
事案概要  賞与を年二回、六月と一二月に、過去の一定期間勤務しかつ賞与支給日に在籍する者に支給する旨の就業規則のある会社で、労使の交渉が長引いたため同年七月から賞与支給日前までに退職し賞与の支給を受けなかった従業員らが、右賞与の支給を求めた事件の控訴審。(控訴認容、労働者勝訴)
参照法条 労働基準法24条1項
民法624条
体系項目 賃金(民事) / 賞与・ボーナス・一時金 / 支給日在籍制度
裁判年月日 1984年8月28日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和57年 (ネ) 2561 
裁判結果 取消 認容(上告)
出典 時報1126号129頁/タイムズ544号221頁/労働判例437号25頁/労経速報1206号22頁
審級関係 一審/01051/前橋地太田支/昭57. 9. 8/昭和56年(ワ)69号
評釈論文 古川陽二・季刊労働法134号170頁/秋田成就・ジュリスト863号104頁
判決理由  ところで、《証拠略》によると、被控訴人における従前の賞与の支給状況は、昭和五二年度夏期賞与は同年六月二九日、冬期賞与は同年一二月一〇日、同五三年度夏期賞与は同年六月三〇日、冬期賞与は同年一二月八日、同五四年度夏期賞与は同年六月三〇日、冬期賞与は同年一二月一〇日がそれぞれ支給日として指定され、右各支給日に在籍する者にのみ支給され、右各支給日以前に退職して当日在籍しない者には、当期の賞与を支給しない取扱いであったこと、従前被控訴人において年二回の賞与支給月である六月又は一二月に例外なく賞与が支給され、右各支給月を二か月以上も遅延して賞与が支給された例は全くなかったこと、本件賞与についても、当初組合は支給日を六月二〇日として要求し、被控訴人と交渉していたこと等が認められる。してみると、賞与は支給日に在籍する者にのみ支給する旨の被控訴人における前記慣行は、賞与の支給時期として、前記給与規程に定められ労使間において諒承されていた六月又は一二月について、各当月中の日をもって支給日が定められた場合には、当該支給日に在籍しない者には、当期の賞与を支給しないとする趣旨の内容のものであり、かつ、右内容の限度において合理性を有するものと解するのが相当である。
 もっとも、前記給与規程の但書には、「但し都合により時期を変更することがある。」旨の定めがあるが、右但書の趣旨は、右に判示した内容の慣行を前提としたうえで、資金調達の困難、労使交渉の未妥結等の特別の事情が生じた場合を考慮して、毎年六月、一二月とした支給時期について、これを合理的な範囲で変更し得ることを例外的に認めたものとみるべきであるから、右支給時期の変更に伴い、当然に支給対象者の範囲に変更を生じ、当該支給日在籍者を支給対象者とする旨の被控訴人主張のような慣行が適用されるものではないと解するのが相当である。したがって、本件のように、本来六月期に支給すべき本件賞与の支給日が、二か月以上も遅延して定められ、かつ、右遅延について宥恕すべき特段の事情のない(この点は本件全証拠によるも認められない。)場合についてまでも、支払日在籍者をもって支給対象者とすべき合理的理由は認められない。