ID番号 | : | 01060 |
事件名 | : | 賃金支払請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 京都新聞社事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 正規従業員退職後、引き続き一年ごとに契約を更新する再雇用嘱託として三年雇用され退職した従業員が、嘱託につき存在した賞与支給日在籍者のみに賞与を支給する長年の取扱いに従って年末賞与を支給されなかったのに対し、年末賞与の支払を求めた事例。(控訴棄却、労働者敗訴) |
参照法条 | : | 労働基準法24条1項 民法624条 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金の範囲 賃金(民事) / 賞与・ボーナス・一時金 / 賞与請求権 賃金(民事) / 賞与・ボーナス・一時金 / 支給日在籍制度 |
裁判年月日 | : | 1984年11月28日 |
裁判所名 | : | 大阪高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和58年 (ネ) 2017 |
裁判結果 | : | 棄却(上告) |
出典 | : | タイムズ549号260頁/労働判例452号72頁/労経速報1232号17頁 |
審級関係 | : | 上告審/01062/最高一小/昭60.11.28/昭和60年(オ)258号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金―賞与・ボーナス・一時金―賞与請求権〕 右事実に前記一、二の各事実を総合して判断すると、本件賞与は、その金額、配分方法及び支給日があらかじめ定められておらず、支給日に近接した時点において被控訴人と労働組合との間の交渉の結果右金額等が決定されたもので、その金額は正規従業員の場合一律の基礎支給額のほか年齢と家族数で定まり、嘱託の場合嘱託手当に一定の支給率を乗じて定まることからすると、その性格は功労報償的というよりも生活補給金的色彩が強いといえるけれども、同時に利益配分的ともいえ、その内容が計算期間以前に定められていない点において労務提供に対する本来的請求権の内容となる通常賃金と顕著に異なることを否定することができない。しかも、嘱託一般につき嘱託期間満了後に支給日が到来する場合には賞与は支給されないという慣行が長年平穏裡に継続され、労働組合もそのことを是認し、控訴人も在職中そのことを知り得べき状況の下にあったものであるのみならず、控訴人の場合正規の従業員を定年退職した後に嘱託として再雇用されたのであるから、五七歳の定年が事実上六〇歳まで延長されたのと同様の結果を生じているといっても、定年制の雇用契約(一種の期間の定めのない契約で、定年まで雇用関係が継続する。)と異なり、契約期間が一年間であり、賃金体系も著しく低い点において、嘱託は正規の従業員とは労働条件が本質的に相違することは否めないのである。以上の事実関係の下においては、少くとも再雇用嘱託に支給される賞与は、労使間において純粋に労働の対象と意識されていたものとは認め難く、本件賞与は労働基準法一一条、二四条が全面的に適用される賃金と解することはできない。 〔賃金―賃金の範囲〕〔賃金―賞与・ボーナス・一時金―支給日在籍制度〕 さきに示した事実関係からすれば、死亡退職の場合を除き、計算期間に在籍しても賞与支給日に在籍しない嘱託には賞与を支給しない旨の確立された労使慣行が存在したということができる。 (中 略) そして、控訴人は在職中前記労使慣行を容易に認識しうる状況の下にありながら、期間満了による退職の半月前まで何ら反対の意思表示をしなかったのであるから、それまでの間控訴人は他の多数の嘱託同様暗黙のうちに従来の多年にわたる取扱いに従う旨の意思を有していたものと解すべく、控訴人は前記労使慣行に拘束されるものといわねばならない。 |