ID番号 | : | 01073 |
事件名 | : | 退職金請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 江戸川製作所事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 会社の破産に伴い退職した従業員が、会社就業規則の定めに従い退職金の支払を会社破産管財人に請求した事件の控訴審。(控訴棄却、労働者敗訴) |
参照法条 | : | 労働基準法11条 破産法47条8号 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 退職金 / 破産と退職金 |
裁判年月日 | : | 1969年7月24日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和42年 (ネ) 2586 |
裁判結果 | : | |
出典 | : | 高裁民集22巻3号490頁/労働民例集20巻5号871頁/東高民時報20巻7号160頁/タイムズ239号175頁/金融法務566号22頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 中祖博司・民商法雑誌65巻6号1032頁 |
判決理由 | : | (1)破産法第四七条第三号の破産財団の管理費用というのも右の破産管財人が占有管理している財産の管理費用をいうにすぎないのであって、会社更生法第二百八条第二号において会社の財産の管理費用というのと同じである。従って営業の廃止、従業員の解雇の如きは右の財産の管理の範囲に属さず、その範囲外の事柄であるから、従業員の退職金債権が破産財団の管理費用に該当しないことは明かである。 (中 略) (2)退職金の法的性格については功労報償説、生活補償説、賃金後払説と見解が分れているが、就業規則、労働協約等によりその支給が義務づけられている限り、その支給は労働条件決定の基準たる意味をもつから、退職金は労働基準法第十一条の規定にいう労働の対償としての賃金とみるべきものであり、しかもその履行期すなわち雇傭契約の終了時期は確実に到来するものであり、ただその時期が不確定であるというにすぎないから、退職金債権は不確定期限付の後払賃金として勤続年数の増加に伴って累増するものとして、退職前既に雇傭契約を発生原因として生じているものと解するのが相当である。従って破産管財人によって従業員が解雇された場合はそれによって初めて退職金債権が発生するものではなく、退職金債権としては既に発生しており、ただ解雇によってその履行期が到来するにすぎないから、退職金債権は破産法第四十七条第四号の破産管財人のなした行為によって生じた請求権には該当しないものというべきである。 (中 略) (3)同条第八号は破産宣告の結果雇傭契約、賃貸借契約等一定の解約申入の期間を要する双務契約が解約された場合に破産宣告後契約終了に至るまでの間に生ずる相手方の賃金賃料等の請求権を財団債権としたものであるが、退職金債権は前述の如く破産宣告前に就業規則、労働協約等に基く退職金の支給を労働条件として雇傭契約を結んだことにより不確定期限付で既に発生しているものであって、破産宣告後における相手方の労働の給付によって退職金債権が発生するという関係にはないから、退職金債権を以て破産法第四十七条第八号の請求権に該当すると解する余地はないものといわなければならない。然らば本件退職金債権は財団債権には該当しないものというべきであるから、控訴人等は破産手続によらないでその権利を行使することは許されない。 |