ID番号 | : | 01075 |
事件名 | : | 退職金請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 栗山製麦事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 自己の都合による退職に際し、退職金は円満退職者にのみ支払うとの退職金規定を根拠に退職金を支払われなかった労働者らが、右定めは労働基準法一六条、二四条に反し無効である等として退職金の支払を求めた事例。(一部原告につき認容) |
参照法条 | : | 労働基準法16条,24条,89条 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金の範囲 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / 賃金請求権と時効 賃金(民事) / 退職金 / 懲戒等の際の支給制限 就業規則(民事) / 就業規則の一方的不利益変更 / 退職金 雑則(民事) / 時効 |
裁判年月日 | : | 1969年9月26日 |
裁判所名 | : | 岡山地玉島支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和41年 (ワ) 26 |
裁判結果 | : | 一部認容 |
出典 | : | 時報592号93頁/タイムズ243号249頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金―賃金の範囲〕 右退職金規定は被告会社の就業規則なる書面上にはないが、退職金は社長の心付の給付金を除けばその算定の基準は明確であり、かつ昭和三四年から昭和三九年にかけてこれに従ったやり方で支給されていた実績もあるうえ、社長の説明により従業員に十分告知されていたことからすれば、右規定は被告会社の就業規則としての性格を持つものと認められる。 しかもその定め方が一ケ月分の平均給与の積立方式であるから、その退職金は労働に対する対価として支払われるものであって労働基準法上の賃金であり、したがって被告会社主張のように使用者の恩恵的な給付金の基準であるとの見解は採用できない。 〔賃金―賃金の支配い原則―賃金請求権と時効〕 〔雑則―時効〕 原告らの退職金は、労働基準法第一一五条にいう賃金にあたると解するべきであり同法第一一五条の適用によって二年で消滅時効になる。 〔賃金―退職金―懲戒等の際の支給制限〕 被告会社は昭和三九年以前の規定は円満退職者以外には支払わない旨の定めであったと主張し、これに添う《証拠略》があるが、(中 略)。 かりにこれが拘束力を有しうる定めとみられるとしても《証拠略》によれば右条項を作ったゆえんは、従業員が会社の都合も考えずにやめるときは、仕事に支障を来すことになるからであることが認められるところ右条項を有効と認めることは即ち退職金をもって労働契約の債務不履行についての損害賠償にあてることに帰着し、これは労働者保護の労働基準法第一六条、第二四条に反することを是認することになるのであるから、かりに右定めがあったとしても右の法律に反するものとして無効といわねばならない。 〔就業規則―就業規則の一方的不利益変更〕 被告会社は昭和四〇年以降の退職者には退職金規定の変更により五五歳以下で本人の都合による退職者については、新に退職金規定が定められるまで支給しないと主張する。 しかしながら原告らのうち昭和四〇年以降に退職した者は昭和三九年以前から勤務する者であって、昭和三九年以前の退職金規定によって退職金を受ける権利を取得していたものであり、それが昭和四〇年における新規定の施行によって五五歳以下の場合に自己の都合による退職であるにせよかかる権利を失うものと考えるべきかであるが、右規定の変更は何ら合理的な理由が認められずまた原告らがこれを承諾したとの主張立証がない本件にあっては右規定の変更によって原告らは昭和三九年以前の規定による退職金請求権を失わないものと解すべく、これに反する被告会社の主張は採用できない。 |