ID番号 | : | 01082 |
事件名 | : | 賃金等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 日本ダンボール研究所事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 倒産した会社に対して、従業員らが、未払賃金、退職金の支払を請求した事例。(請求認容) |
参照法条 | : | 労働基準法11条,115条 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / 賃金請求権と時効 賃金(民事) / 退職金 / 退職金請求権および支給規程の解釈・計算 |
裁判年月日 | : | 1976年12月22日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和50年 (ワ) 11020 |
裁判結果 | : | 認容(確定) |
出典 | : | 時報846号109頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金―賃金支払の原則―賃金請求権と時効〕 《証拠略》によると、被告会社代表取締役Aは、原告X1、同X2、同X3らも出席していた昭和四九年一一月一二日の債権者集会において、被告会社の資産および負債の明細、支払手形、在庫表等の資料を債権者らに配布し、右資料に基づいて被告会社の債権、債務を説明したうえ右原告らを含む債権者らに対し債務を弁済しなければならない旨報告したこと、被告会社が席上債権者である右原告らに配布した資料の負債明細書の給料手当欄に、原告X1の分とし別表一記載の未払賃金のうち昭和四九年一〇月分までの合計額である金四四万五八八〇円、原告X2の分として同表記載の未払賃金のうち昭和四九年一〇月分までの合計額である金三四万四七二二円、原告X3の分として同表記載の未払賃金のうち昭和四九年一〇月分までの合計額である金二六万八五七〇円とそれぞれ記載されていることが認められ他に右認定を左右するに足りる証拠がない。 右事実によると、被告会社は原告X1、同X2、同X3に対し時効完成後の昭和四九年一一月一二日、債権者集会の席上、債務の存在を認めこれを表示したことが認められる。そうだとすると被告が本訴において時効を援用することは許されないというべきである(最高裁昭和四一年四月二〇日大法廷判決、民集二〇巻四号七〇二頁参照)。 〔賃金―退職金―退職金請求権および支給規程の解釈・計算〕 《証拠略》によると、(イ)被告会社の就業規則等には退職金の支払規定の定めがなかったところ、経理事務を担当していた原告X3は、昭和四七年ころ、他社の退職金支給基準を三、四例選び、これを被告会社の代表取締役Aに示して退職金支給基準を明確にするよう進言し、これに基づき、被告会社は退職金支給基準を(1)勤続年数が一年未満の者に対しては支給しない、(2)勤続年数が二年未満の者に対しては退職時の一ケ月分の給与相当額を支給する、(3)勤続年数が二年以上の者に対しては勤続年数から一を引いた数に退職時の一ケ月分の給与相当額を乗じた額を支給する、(4)端数月は切り上げて勤続年数を算定する旨定めたことおよび被告会社の従業員は右基準で退職金が支給されることを知っていたこと、(ロ)被告会社は、昭和四七年九月ころ退職したBに対し、同人の勤続年数が一年余で退職時の給与月額が五万円であったので、退職金として金五万円を支払ったこと、昭和四八年一月ころ退職したCに対し、同人の勤続年数が六年で退職時の給与月額が一六万円であったので、退職金として支払うべき金八〇万円を同人の承諾を得て、同人の兄が被告会社に対し負っていた金三五〇万円の債務と相殺したこと、同年六月ころ退職したDに対し、同人の勤続年数が約二年で退職時の給与月額が六万五〇〇〇円であったので、退職金が金六万五〇〇〇円となるところ、同人が渡米するために退職したので餞別金も含めて金一〇万円を支払ったこと、昭和四八年九月ころ退職したEに対し、同人の勤続年数が二年で退職時の給与月額が九万円であったので、退職金として金九万円を支払ったこと、約一年六月勤め昭和四七年一二月ころ退職したF、約一年三月勤め昭和四九年八月ころ退職したGに対しいずれも退職金を支払っていないがその理由は当時被告会社の資金が不足していたことによるもので右両名に対し退職金を支払う旨約束していたこと、Hおよび昭和四九年五月ころ退職したIに対し退職金を支払っていないが、Hが在職中自殺したので被告会社はこれを事故退職の取扱にしたためで、Iは同人の勤続年数が一年未満であり被告会社の退職金支給基準に該当しないためであることが認められ、被告会社が従業員の退職時に支払った金員は餞別金ないしお祝金であるという被告代表者Aの本人尋問の結果は信用できず他に右認定を左右するに足りる証拠はない。 右事実によると、被告会社には明文の退職金規定は存在していなかったが、右認定した基準に基づく退職金算出方法で算定した退職金が支払われており、右基準による退職金の支給は被告会社において確立した慣行になっていたことが認められるから右慣行は被告会社と原告らとの雇用契約の内容となっていたと認めるのが相当である。 |