ID番号 | : | 01083 |
事件名 | : | 退職金請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 東京貨物運送健保組合事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 「役付(係長以上)円満退職者勤続一〇年以上の者又は特に組合に功労のあったものには、給与金の五割以内増額支給することができる。」という退職金規程の条項に基づき、健保組合業務課長、徴収課長等を歴任した退職者が組合に対し五割の増額退職金の支給を請求した事例。(控訴棄却) |
参照法条 | : | 労働基準法11条 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 退職金 / 退職金の法的性質 |
裁判年月日 | : | 1977年11月30日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和51年 (ネ) 1325 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例287号41頁 |
審級関係 | : | 一審/東京地/昭51. 5.17/不明 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 一般に退職金の支給が就業規則等に定められている場合に、右規定に基づく退職金の支給をもって労使間の権利義務関係というためには、支給するか否か及び支給するとして額をいくらにするか等の支給条件が労使間を規律拘束する基準となり得る程度に具体的明確に定められていて、かつ、これについて使用者が当然支払義務を負担する趣旨のもので、使用者の一方的意思に基づく裁量によって支給の有無及び支給金額が決せられるものでないことを要するものというべきである。けだし、請求権があるとするためには、支給すべき金額を含めてその内容が具体的に確定できるものでなければならないことはいうまでもないところであり、また支給条件が明確に定められずに使用者の一方的意思によって決せられる場合には、退職金の支給は義務の履行としてではなく、恩恵的給付としてなされるものとみるよりほかないものというべきだからである。 本件についてこれをみると、旧規程の「役付(係長以上)円満退職者勤続一〇年以上の者」というのは、条件として明確であるけれども、「五割以内」というのは、それだけでは五割以内のいくらとすべきなのか具体的場合における算定基準が全く不明であり、さらに「増額支給することができる。」までを通じて全体としてみれば、支給するか否か及び支給するとして額をいくらにするか等の支給条件は結局不明確であって、被控訴組合が当然一定額の支給義務を負担するとは到底いえず、所詮これらの決定は被控訴組合の裁量判断に俟つよりほかないものというべきである。 新旧両規程の「組合に特に功労のあったもの」を支給対象者とする増額退職金については、右の対象者に該当するか否かについて被控訴組合の裁量判断を必要とするから、右に述べたことはより一層妥当するものというべきである。 そうとすれば、新旧両規程の定める増額退職金の支給は被控訴組合と職員との間の権利義務関係ということができないから、被控訴組合の職員は右規程に基づいては被控訴組合に対して増額退職金請求権を有しないと判断すべきものといわなければならない。 (中 略) 3 本件すべての証拠によっても以上の認定判断を左右するに足りる事実は認められない。 したがって、控訴人が被控訴組合に対して増額退職金の支払いを求める請求は理由がないといわなければならない。 |