ID番号 | : | 01091 |
事件名 | : | 退職金支払請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 香港上海銀行事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 退職金協定が失効していたため、退職金は支給時の退職金協定による旨の就業規則の定めに従い退職金の支給を受けなかった銀行の臨時従業員が、失効した右退職金協定は労働契約の内容となっていたとして右協定による退職金の支払を求めた事例。(請求認容) |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項3号の2 労働組合法16条 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 退職金 / 退職金請求権および支給規程の解釈・計算 |
裁判年月日 | : | 1983年3月28日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和56年 (ワ) 4373 |
裁判結果 | : | 認容(控訴) |
出典 | : | タイムズ495号150頁/労経速報1151号3頁/労働判例407号28頁 |
審級関係 | : | 控訴審/01105/大阪高/昭60. 2. 6/昭和58年(ネ)639号 |
評釈論文 | : | 山口浩一郎・ジュリスト817号93頁/渡辺章・中央労働時報733号9頁 |
判決理由 | : | ところで、労働協約の失効後のその余後効の有無については、明文の規定のないところから、種々議論の存するところであるが、少なくとも、労働協約のうちで、賃金(退職金を含む)や労働時間その他個々の労働者の労働条件に関する部分については、その労働協約の適用を受けていた労働者の労働契約の内容となったものと解するのが相当である。けだし、労働協約の余後効を認めず、かつ、右のようにも解さなければ、労働協約の失効後は、これに代る新たな労働協約が締結されない限り、従前、適用されていた賃金、労働時間その他の労働条件について、これを律する根拠がなくなって不合理であるのみならず、これを実質的にみても、労働協約によって、賃金、労働時間、その他の労働条件が定められた場合には、右労働協約の存続中、当該労働組合所属の労働者は、これに従って労務を提供し、賃金等の反対給付を受けていたのであるから、右労働協約に定める労働条件は、実質的に個別的な労働協約の内容となっていたものと認めるのが合理的であるからである。従って、労働協約が失効した後でも、そのうち、賃金、労働時間、その他の労働条件に関する部分は、これを変更する新たな労働協約が締結されるか、又は、個々の労働者の同意を得ない限り、そのまま個々の労働者の労働契約の内容として使用者と労働者とを律するものというべきである。これを本件についてみるに、被告と外銀労との間で締結された退職一時金及び退職年金に関する本件協定は、前記当事者間に争いのない内容自体に照らし、外銀労に属する被告の従業員の退職一時金、退職年金の受給資格、その計算方法等退職金の額等を具体的に定めたものであって、個々の右従業員の労働条件に関するものというべきであるから、本件協定で定めた右退職一時金、退職年金の受給資格、その計算方法、額等は、本件協定が有効に存続していた間、外銀労所属の被告の従業員であったものについては、個々の労働契約の内容となっていたものというべきである。 (中 略) 原告は、本件協定が有効に存続していた昭和五三年一二月七日に被告の臨時従業員として雇用されたから、当時効力を有していた本件協定は、当然原告にも準用され、従ってその退職金については、本件協定の定める計算方法によって計算した額が支払われることがその雇用契約の内容となったものというべきである。 よって、原告についても、右労働契約の効力として、本件協定の失効にも拘わらず、その退職したものと看做された昭和五五年六月三〇日の時点において、本件協定によって定められた計算方法によって計算した額の退職金の支給を受け得るものというべきである。 |