ID番号 | : | 01095 |
事件名 | : | 退職金請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 太洋興業事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 就業規則の退職金規定制定以来これによらず、退職する従業員と交渉の上適宜退職金の額を決定し支給していた会社に対し、退職従業員が、右退職金規定に基づく退職金の支払を求めた事例。(一部認容) |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項3号の2 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 退職金 / 退職金請求権および支給規程の解釈・計算 就業規則(民事) / 事業の変更と就業規則 |
裁判年月日 | : | 1983年7月19日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和56年 (ワ) 8039 |
裁判結果 | : | 一部認容 |
出典 | : | 労働判例415号44頁/労経速報1170号7頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金―退職金―退職金請求権および支給規程の解釈・計算〕 しかしながら、就業規則が有効に作成され、届出義務が履行された以上、その後就業規則の基本的労働条件条項と現実に事業場で行われている基本的労働条件との間に日時の経過とともにくい違いが生じたとしても、現実の労働条件が就業規則所定のそれを下回るものであるときは、就業規則の変更の手続を踏まないかぎり、くい違いを生じてから相当の期間を経過していたとしても、労働者側はいつでも就業規則所定の労働条件の実施を主張し得るものと解すべきである。 これを本件についてみるに、本件就業規則は、既に判示したとおり有効に成立し、行政官庁に届出られているのであるから、前示のとおり、被告会社が退職金支給について本件退職金規定に依らずに当該退職従業員と交渉のうえ適宜その支給金額を決定して支給してきたとしても、この事実をもって直ちに本件就業規則のうち本件退職金規定部分がその効力を喪失したものということはできない。 〔就業規則―事業の変更と就業規則〕 ところで、当該就業規則が適用される事業場の業種や営業内容が就業規則制定後に変更された場合、当該就業規則中当初の業種や営業内容に特有の労働条件等(例えば始業及び終業の時刻、勤務形態、休憩時間、休日等)について規定する部分は、業種等の変更に伴いその効力を喪失することがあると考えられるが、しかし、その他の労働条件に関する規定部分については業種等の変更があったからといって当然にその効力を喪失するものとは解せられない。そして、退職金は、当該業種に特有なものとはいえず、また、労働契約の要素をなす基本的労働条件の一つであるから、就業規則中の退職金に関する規定部分は、業種等の変更があったからといって当然にその効力を喪失するものとは到底考えられない。 従って、被告会社が主張するように本件就業規則がその対象事業場とする映画館のAが昭和四三年に改装されて他の業種のBとなったとしても、本件就業規則中の本件退職金規定は、当然にはその効力を喪失したものとはいえず、右被告の主張は失当である。 |