全 情 報

ID番号 01103
事件名 退職金請求事件
いわゆる事件名 秋山商店事件
争点
事案概要  会社により解雇された従業員が、自己都合退職者のみに退職金を支給する就業規則の定めを根拠に退職金を支払われなかったのに対し、退職金は解雇も含む退職という不確定期限付の後払賃金である等として退職金の支払を求めた事例。(請求棄却)
参照法条 労働基準法89条1項3号の2
体系項目 賃金(民事) / 退職金 / 懲戒等の際の支給制限
裁判年月日 1984年8月29日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和58年 (ワ) 9273 
裁判結果 棄却
出典 労働判例442号54頁/労経速報1199号16頁
審級関係
評釈論文 山口浩一郎・労働経済判例速報1220号27頁
判決理由  しかし、退職金を支給するかどうか、また支給するとしてその支給条件をどのように定めるかについては、本来使用者の裁量において定め得るものというべきであるから、使用者がこれを支給するとしてそこに賃金の後払的性格のほかに、退職事由の違いにより支給条件に差異を設けるなど功労報償的性格を併せ持たせることとしたとしても、それが法令もしくは公序良俗に反するものでない限り、許されないものではないといわなければならない(そしてそれが就業規則等により予め明確にされたときは、労基法上の賃金と解されることになる。)。従って、かかる個々の支給条件に関する定めを離れて、一義的に退職金を原告の主張するように「退職という不確定期限付の後払賃金」と解することはできないといわなければならないし、またそれを理由として、本件就業規則一九条が解雇された者についても適用されると解することもできないといわなければならない。
 ところで、本件規定は、前示のように、退職金支給の条件の一つとして、「自己の都合により退職する場合」としているが、かかる規定も、それが死亡退職や定年退職の場合をも支給の除外とする趣旨であれば格別、解雇された場合を支給の除外とする趣旨とすれば、前記の功労報償的性格を併せ持たせたものとして未だ社会的相当性の見地から無効とまではいえないというべきである。そうすると、原告の退職理由が解雇であること(それが懲戒解雇であるか、普通解雇であるかは別として)については原告の争わないところであるから、原告について本件規定を適用する余地はなく、従って原告には本件就業規則による退職金請求権はないものといわなければならない。