ID番号 | : | 01117 |
事件名 | : | 退職金請求等事件 |
いわゆる事件名 | : | 東花園事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 社宅の問題について社長と感情的に対立し退職した労働者に、酒乱による警察沙汰、取引先からの小額代金を着服消費したこと、等の一連の非行を理由として、退職金を支給しなかった会社に対して、退職金の支給が求められた事例。(請求一部認容) |
参照法条 | : | 労働基準法11条,14条 民法627条1項 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 退職金 / 懲戒等の際の支給制限 |
裁判年月日 | : | 1977年12月21日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和52年 (ワ) 1849 |
裁判結果 | : | 一部認容 |
出典 | : | 時報887号114頁/労経速報971号19頁/労働判例290号35頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | (三)前掲甲第一号証の二によれば、賃金規則五一条は「左の各号の一に該当する者には退職金を支給しない。ただし勤続一〇年以上の者に対しては一、二、三項以外に限り特に事情を考慮して支給額の半額以下において退職金を支給することがある。一 懲戒解雇を受けた者、二 虚偽の理由を以って退職しようとし若しくは不穏当な手続きを以って在職中に他に就職運動をした者、三 退職に際し上長に反抗し他を煽動し又は社内秩序を乱した者、四 会社の承諾なく退職した者、五 社規社則を違反した者、六 不正、不都合な所為のあった者」と規定していることが認められる。 右退職金支給除外事由のうち本件において被告の主張と関連を有する五号及び六号を杓子定規に解すると、右各号該当行為(以下非違行為という)がいかに些細であっても、その従業員は退職金請求権を全く有しないこととされ、但書により基準額の半額以下が支給されることがあるに過ぎないことになる。しかも、但書による退職金支給も使用者の裁量にかかるところであるから、使用者による支給の意思表示がない限りたとい半額であっても従業員は退職金を請求し得ない結果となる。このことは退職金の賃金後払としての性格からはもとより、その業績報償的性格を加味して考察しても労働者にとって不当なものというべきである。そこで退職金請求権を発生せしめないような非違行為とは、他の支給除外事由のうち最も重いとみられる懲戒解雇の場合との対比において考察し、懲戒解雇に値するまでの必要はないがその態様、情状において相当程度重大なものであることが必要であると解するのが相当である。(因みに、本件の退職は、後記認定によれば、右支給除外事由のうち四号に形式的に該当することになる。しかし労働者は雇用期間の定めがない場合民法六二七条一項によりいつにても雇用契約解約の申入れをすることができ、その後法定の期間を経過することにより使用者の態度いかんにかかわらず解約の効果が生ずるものであるのに、使用者が退職(解約の申入)を承諾しない限り労働者が退職金を全く受領し得ないという制度を設ければ、労働者としては、雇用関係の継続を望まなければ退職金受給をすべて断念しなければならないという不合理な結果を招くことになるし、退職金受給を望めば不本意にも雇用関係を継続しなければならないことになり、そのことは契約期間を制限した労基法一四条の法意に反する結果を容認することにつながるのである。かかる観点から使用者の承諾のない退職者には退職金を全額支給しないとする右四号の規定は労働法上の公序に反するものとして無効と解すべきである。) (中 略) 、証拠上認め得る原告の非違行為に著しい重大性は認めがたいのであり、加えて、前記認定のような非違行為及び酒の上での過ちを除けば、原告の日常の勤務振りに特に問題とすべき点はなく多忙の時は午前五時から午後一〇時まで勤務していたことはAもその本人尋問において認めるところであることをあわせ考えれば、原告には退職金支給除外事由に相当する非違行為は存しないものというべきである。 |