ID番号 | : | 01131 |
事件名 | : | 譲受債権請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 宇和島郵便局事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 宇和島郵便局に勤務していた者から退職手当の一部の譲渡を受けた者が国に対して右譲受債権額の支払を求めた事例。(請求棄却) |
参照法条 | : | 労働基準法24条 (旧)民事訴訟法618条 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / 直接払・口座振込・賃金債権の譲渡 |
裁判年月日 | : | 1962年10月16日 |
裁判所名 | : | 松山地宇和島支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和37年 (ワ) 42 |
裁判結果 | : | |
出典 | : | 訟務月報8巻11号1636頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 原告訴訟代理人らは、退職金は民事訴訟法第六一八条の規定により差押えが可能であるから、差押可能の債権はこれを当事者が任意に譲渡することを禁止するいわれはないと主張するが、差押えが可能であったとしても、だからといって譲渡が可能であると断ずることはできない。何となれば、差押えを禁じたる債権は譲渡することを得ざる旨、或は債権が譲渡することを得べき場合においてのみ、差押えることを得るものなる旨を、定めたる法規の存在しない以上、凡そ債権には差押えを許さゞるも債権者の自由意思に基き処分することを防げざるものあり、また差押えることを防げざるも債権者において任意に処分することを得ざるもののあることは、これを否定するを得ないものであるところ(大審院昭和九年六月三〇日民四判昭和九年(オ)第五二〇号体系二六巻一一二二頁参照)いま、労働基準法にいわゆる賃金について考えてみるのに、労働者の賃金は、民事訴訟法第六一八条第二項によって、一定の制限を超過する部分に限り差押えることを防げないけれども、同条がかかる規定を設けた所以のものは、主として労働者の債権者の利益を顧慮したるにほかならないものと解すべきであるから(前記判例参照)同条が差押えを許容しているからといって、譲渡までも許容したものと解すべきではあるまい。換言すると、労働基準法にいわゆる賃金は、既に述べたように同法第二四条の規定によって譲渡を禁止しているのであるから、他人に賃金を支払う結果をきたす差押えもまた許すべきではないが(民訴法第六一八条第一項)前記民事訴訟法第六一八条第二項の緩和規定があることによって、始めて差押え(差押のみが)が許容されたものと解すべきものだからである。原告訴訟代理人らの主張は採用の限りではない。 |