ID番号 | : | 01159 |
事件名 | : | 解雇予告手当金等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 日生興業事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 従業員を採用するにつき、新聞紙上で自社の名義ではなく別の名義を用い、かつその名義の辞令を交付していたことにつき労働者が、使用者ではない右の者に対して解雇予告手当等を請求した事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法11条 商法23条 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 名板貸と賃金請求権 |
裁判年月日 | : | 1977年10月19日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和51年 (ネ) 1974 |
裁判結果 | : | 変更 |
出典 | : | 時報872号114頁/東高民時報28巻10号263頁/タイムズ365号407頁 |
審級関係 | : | 一審/東京地/昭52.10.19/昭和50年(ワ)10770号 |
評釈論文 | : | 松岡誠之助・ジュリスト719号129頁 |
判決理由 | : | 《証拠略》によると、控訴人は自己の所有する福島県耶麻郡所在の土地をAと名づけて分譲販売するにつき訴外B株式会社(以下単にBという)の協力を求めることにし、昭和五〇年八月末頃Bとの間で、控訴人は内部的にはBに対し右販売を全面的に委託し、Bがその計算と責任においてこれを他に販売し、控訴人はその売上高につき一定の割合で歩合を取得すること、しかし、Bはもともと宅地建物取引業を行う資格をもっていなかったので、外部的には右販売等はすべて控訴人の名において行う旨の契約を締結したこと、そこで、Bは、従来控訴人が使用していたCビル五階の三室のうち二室に自己の従業員約一五人を常駐させて、前記土地の販売業務に当らせ、控訴人は従来約一三人いた従業員を約四人に整理して、その営業部を廃止し、右Bの従業員は控訴人の営業部を組織するような観を呈したこと、控訴人とBとの前記契約においては、Bの従業員の給与等については同社が責任をもつこととされていたが、前記対外的配慮から、Bはその従業員を採用するにつき、新聞紙上の募集広告には控訴人名義を用い、右新聞広告をみて、これに応募し、昭和五〇年九月八日採用された被控訴人に対して控訴人名義の辞令を交付したこと、右辞令は控訴人方の総務担当のDが作成し、控訴人の社印を押捺したこと、控訴人代表者Eは右広告及び辞令に控訴人名義が用いられたことを知った後も被控訴人に対しては同人が控訴人の従業員でない旨を告げた形跡はなく、被控訴人は右の経緯から控訴人に雇傭されたものと思っていたこと、被控訴人の右の雇傭条件は賃金月額一五万円、毎月一五日締切り、二五日支払の約定のもので、この約定の下に被控訴人はBの前記土地の販売業務に二ケ月余従事したが、前記経緯により被控訴人は自己の従事するBの右販売業務を控訴人の業務と誤認していたこと、以上の事実を認定することができ、これを覆えすに足りる証拠はない。 右認定事実からすると、控訴人は本件土地の分配、清算関係についてはともかく、右販売のための第三者との取引等については自己の商号をBに使用することを許諾したものと認めるのが相当であり、控訴人は商法第二三条によりBが控訴人の名において雇傭し、その名において労務に服さしめた被控訴人に対する賃金の支払につき、Bと連帯して弁済の責に任ずべきものと認めるのが相当である。 |