ID番号 | : | 01162 |
事件名 | : | 時間外割増賃金請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 東京女子大学事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 労働基準局への宿日直届がなされなかったにもかかわらず、宿直および休日勤務をさせられていた労働者が時間外割増賃金、深夜割増賃金、休日割増賃金の支払を求めたが、時効を理由に請求を棄却された事例。(請求棄却) |
参照法条 | : | 労働基準法41条3号,115条 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / 賃金請求権と時効 |
裁判年月日 | : | 1978年1月31日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和52年 (ワ) 8113 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労経速報974号16頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 先ず、時効の成否から判断する。原告が本訴において時間外割増賃金等を請求している宿直及び休日労働(以下「宿日直労働」という)は昭和五〇年三月までに関するものであり、(人証略)によれば同月における原告の最終の宿日直労働は同月二四日であることが認められる。従って、原告が仮に宿日直労働につき時間外割増賃金等を請求し得るとしても、前記争いのない事実によればその最終弁済期は遅くとも昭和五〇年四月二一日に到来していることになるから、本訴が提起された昭和五二年八月二九日には労基法一一五条所定の時効期間が経過していることは明らかである。 原告は被告が右時効期間経過後時効の利益を放棄した旨主張する。(人証略)によれば、被告は本部も原告の勤務する短期大学部も同じ地区にあり所轄労働基準監督署長により従業員の宿日直労働につき労基法四一条三号所定の適用除外許可を得て定額の手当を支給していたため、短期大学部を他地区へ移転した後も同部勤務の従業員の宿日直労働につきあらためてその地区の所轄労働基準監督署長の許可を得ることを要しないものと誤解し、原告も含め同部勤務の従業員の宿日直労働に対し移転前同様定額の手当を支給していたところ、原告の指摘により昭和五〇年一〇月短期大学部の地区の所轄労働基準監督署長より労基法四一条三号所定の適用除外許可を得たこと、その後、被告は、昭和五一年一二月に至り、前記のとおり原告から労基法違反の告訴を受けたが、検察官から使用者対従業員という間柄を考え円満に話合いをするよう勧告されたため、「被告としては、右の許可手続上に過誤があったにとどまり、宿日直手当は従前同様支給しているからそれ以上宿日直労働につき特別の金員を支払う必要はなく、また、仮に支払義務があったとしても既に時効期間を経過しているからいずれにせよ原告の宿日直労働に対し時間外割増賃金等の支払義務は存在しないが、被告控訴人としての立場において、許可を得なかった手続上の過誤につき遺憾な点のあったことを表明する趣旨で原告に対し見舞金名下に一〇万円支払う用意があること」を原告側に伝え、双方弁護士を代理人として前記のとおり昭和五二年五月に三回交渉したが、結局原告側の容れるところとならなかったことが認められる。原告は被告が右交渉において時間外割増賃金等の債務の存在を認めて減額を求めた旨主張し、自らもその旨供述するが、右供述は(人証略)との対比において採用することができない。そして、時効の利益の放棄とは時効により利益を受けるものがその利益を享受せず完成した時効の効力を消滅させる旨の意思表示であるから、右認定事実からは、被告がそのような意思表示をしたものとはとうてい認めることはできない。 |