全 情 報

ID番号 01164
事件名 従業員地位不存在確認事件
いわゆる事件名 葦原運輸機工事件
争点
事案概要  使用者のなした組合役員に対する懲戒解雇につき、使用者は従業員の地位不存在の確認を求める本訴を提起し、右役員は定期昇給分を含む賃金及び一時金の支払を求める等の反訴を提起した事件。(本訴棄却、反訴一部認容)
参照法条 労働基準法2章,24条
民法624条
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 賃金の計算方法
裁判年月日 1979年5月7日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和47年 (ワ) 901 
昭和47年 (ワ) 3066 
昭和47年 (ワ) 3495 
裁判結果 本訴棄却 反訴一部認容(控訴)
出典 労働民例集30巻3号587頁/時報960号103頁/労経速報1016号21頁/労働判例322号70頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔賃金―賃金請求権の発生―賃金の計算方法〕
 前記(一)認定の会社の賃金実態によれば、家族手当については、その支給基準が別表(三)記載のとおり順次改訂され、扶養家族数によって直ちにその金額を求めることができ、被告三名も従業員として右基準が適用され、それに従って家族手当が増額したことが推認されるが、その余の賃金項目についてはいわゆるベースアップが行なわれたことはなく、その増額については各従業員によってまちまちであり、その増額の仕方に一定の法則を見出すことは困難であって、全く会社の裁量にゆだねられ、会社の意思表示がなされてはじめて賃金が増額する制度をとっているのであるから、被告三名につき会社の何らの意思表示なしに当然賃金が増額したものということはできず、被告三名のこの点に関する請求は失当であるといわざるを得ない。
 〔賃金―賃金請求権の発生―賃金の計算方法〕
 一般的に、右のような平和義務条項を結ぶことはその有効性について論議の存するところであるが、仮にその有効性を肯定するとしても、少くとも従業員あるいは労働組合の自由意思に基づく合意であることを要するものと解すべきであり、使用者が年末一時金の支払と抱き合わせて従業員あるいは労働組合に対して平和義務条項の締結を迫るとか、平和義務条項を締結しない限り年末一時金の支給をしないとすることは、従業員あるいは労働組合の自由意思を奪うこととなって極めて不当であり、たとえ、使用者の右のような年末一時金の支払と抱き合わせた平和義務条項の提案を従業員が承諾して合意が成立したとしても、その平和義務条項については原則として無効であると解すべきである。
 本件についてこれをみるに、会社が分会に対しあっせん案どおりの年末一時金の支給を承諾しながら、平和協定を締結しない限り現実の支給をしないとするのは許されず、右年末一時金の支給については平和協定締結の問題とは無関係に完全に合意が成立し、支給する義務があるといわなければならない。